もうやだ。なんなのこの学校。なんでこんな変人ばっかりなの。

なんて嘆いても仕方ないのだけれど、今はそうせずにいられなかった。許可が必要なら土下座でもする。そのくらい、この現実を受け止めたくなかったのだ。


「こちら生徒会長の妹の荒木咲希ちゃん。で、こちら緑間君」

「通りで赤司が嬉々としていたわけなのだよ…」

「赤司君が嬉々?あぁ、会長のこと大好きだものね」

「………」


遠い目をした彼らに声を掛ける言葉も見つからなくて、今も仲良さげに話しているその2人を睨んどいた。練習しろ練習を。

そして今さつきちゃんの隣に立つ緑間君とやらは、かなりの変わり者或いは電波キャラらしい。あ、むしろオネエ?そっちだった?

緑間君の首元で輝くネックレス。それがチェーンだったりしたらまだしも明らかに女物で、その認識をせざるを得なかった。


「…なんなのだよその目は」

「いや、なんでもないです」

「一応言っておくとこのネックレスは今日のラッキーアイテムなのだよ」

「………女物のネックレスが?」


そんな性別を絞るラッキーアイテムがあるのか。


「違う。ネックレスを持っていなくて母親に借りたのだよ」

「へぇ…」


緑間君のお母さんはどんな心境だったのだろう。毎日のことであるなら慣れているのかもしれないけれど、にしてもそれを着けて学校に行くとは相当こらえたはずだ。

ちなみに私は笑うのを堪えるのに精一杯。素をさらけ出したくない私は人前で笑うことも満足にできないらしい。


「赤司君っていっつもあんな感じなんですか?」

「あんな感じ?」

「ホモくさいっていうか」

「……そう見られても仕方がないが、違うのだよ」

「まるで弟だよね、赤司君」

「あの兄のどこに慕う要素があるんだか……」


そう言いながら兄を見れば、ちょうど目が合う。満面の笑みで腕を大きく振る様はまるで犬だ。

そして隣の赤司君が私を睨んだのには気付かないふりをしようと思う。あの人シスコンなんだもの、仕方がない。


そして。そんな赤司君を見る緑間君の表情がとても柔らかかったのだ。小さい頃の兄を思い出させるような、そういう表情。

初対面の私がいる前で自然体になれる人なのだから、この人には多分裏表がない。付き合い浅くても図々しい高尾君と一緒だ。


「緑間君って変人だけどいい人ですね」

「急になんなのだよ」

「思っただけですよ、気にしないでください」


満足いかない。といった感じの表情だ。私からすれば知ったこっちゃないって話だが。

区切りも良かったので、別れの挨拶もそこそこにさつきちゃんに目配せをする。どうやら通じたようだ。

彼には挨拶なんていらないと思っていたが、副主将だということを思い出して目を合わせた。女子の中じゃ身長は高いけれど男子、しかもバスケ部員相手だとかなり見上げるらしい。

例のごとく建前で、作った笑顔で言う。


「練習お邪魔しました。頑張ってください」


緑間君は拍子抜けしたようなきょとんとした顔を見せた。どうしよう笑っちゃいそう。

だが、そこで笑ってはいけないと判断した私は逃げるようにその場から去る。

帝光中。変人ばかりだけれど変人なりに面白い人もいるみたいだ。例えばあの緑色の頭の部員…とかね。




(素ではもちろん)(作り笑いもできないと思ってたのだよ)


*20130316



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