さつきちゃんが向かう先にいた男を見て思わず「黒い」と呟いてしまった。でも恐らく、誰にも聞こえてない。

私が知っている青峰君は、ただひたすらにバスケ馬鹿ということだけ。勉強なんかも全くできないのにバスケだけは本当に凄いと涼太が言っていた。


「青峰君、ちょっとだけ時間いいかな?」

「あ?なんだよ」

「こちら荒木先輩の妹の荒木咲希ちゃん。キセキの世代を知って欲しいって赤司君が」

「荒木咲希です。いつも兄……と、涼太がお世話になってます」


身内の知り合いに会うときは、こういうのが面倒だな、と凄く……もの凄く思う。なんで知らない人にいちいち過去のことに関してお礼を述べなければならないよだろう。

結局は礼儀とかそういうものの為のただの建前。涼太のあの笑顔と同じようなものなんだ。

私は涼太ほど器用な人間ではないから同族嫌悪とはほど遠いけれど、でもこの行為に関しては本当に嫌になる。

日本人だったら誰しもがやることだけれど、私と涼太の場合表面上だけで気持ちがないんだ。にも関わらず気持ちが入ってるように感じさせる。それが、それだけが私と涼太が同族の理由。


「あー会長と黄瀬って従兄弟だったっけか」

「そうです。すみません、練習の邪魔しちゃって」

「俺だって赤司には逆らえねーよ」

「赤司君?別に従ってるわけじゃないんですけど……まぁ見学させていただいてるのに部長に逆らおうなんて図太い性格してませんよ」


愛想笑いとともにそう告げる。

見学させていただいてる、じゃなくてさせられてる。それから練習を邪魔してるけど私も邪魔されてる。というのは伏せておこう。

言ってもどうしようもない。だからその本音を隠して、坦々と礼儀正しい私を作る。物事が円滑に進むように、面倒なことが起こらないように。

そんなことを思っていれば、青峰君がすっと目を細めた。なんだなんだ。


「お前ってなんか黄瀬に似てんな…」

「は?あ、すみません。涼太に似てたら私は今頃モデルですよ」

「いやそういうんじゃなくて…………あーまぁどうでもいいわ」


なんだかよくわからないまま青峰君との面会タイムは終了らしい。前を歩く桃色の髪が面白いくらいテンポよく跳ねる。


……青峰君はきっと気付いてる。私と涼太が似てるっていうのはきっと外面じゃなくて内面を言った言葉だったんだ。

一体何処まで涼太の素を知ってるのだろう。




(荒木咲希…か、黄瀬みてーな笑顔だったな)


*20130306



prev / next

BACK
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -