確かに赤司君は「キセキを知って欲しい」と言ったけれど、見ているだけで十分だと私は思っていた。 スポーツマンの凄みを知るには、見るのが一番だと思う。そりゃあ競技に参加できるならそれがベストだとは思うけれど、バスケ…しかも男バスなんて恐れ多い。 もう一度言うと、見るだけだと思っていたのだ。 「咲希ちゃん久しぶりね!」 「そうだけど違うんだよ」 「赤司君に頼まれたんだもん!頑張らなくちゃ」 「さつきちゃん聞いてる?ねぇ!?」 例のバスケ部部長の赤司君は彼女を呼び出し、キセキを紹介するよう頼んだのだ。別にさつきちゃんが嫌いとかそういうわけではないのだけれど、話を聞け。 全く、類は友を呼ぶとはよく言ったものだと思う。どうも私の周りには自己中心的な思考の持ち主が多い。あるいは帝光中に多いのか。 「咲希ちゃん!最初に我らが部長赤司君ね。名前言い合ったぐらいでしょ?」 「あー、まぁ」 「赤司君はバスケ部部長で…あ、あと豆腐同好会副会長」 「いやなにそれ」 豆腐同好会?まさかの豆腐ですか。健康ですか。確かに見るからに綺麗な肌ではあるけれど。 なにか嫌な予感がする。そういえば、多分、兄は豆腐が好きだった。そんな気がする。 「荒木さん、君のお兄さんにはいつもお世話になってるよ」 「どういう意味で?」 「会長は色々なお店をご存知でね、そして美味しいお店ばかりだ」 「へぇ……」 その会長は“生徒会長”か“同好会会長”かなんて考えたくもないし、これ以上の追求は辞めておこうと思う。会話の流れからして恐らく両方だろうが。 以前から思っていたけれどあの人はやはり感性がどこか一般人と変わっている。そんな人が会長を勤められる、この中学も。 ふと高尾君はどうしてるんだろうと思って探してみると、まだ涼太と話しているらしかった。2人は正反対だと思っていたのだけれど。 「じゃあ次は青峰君のとこに行こっか」 「青峰君?あぁ、さつきちゃんの幼なじみの…」 「覚えててくれたんだ、嬉しい!」 覚えてるもなにも、涼太がよく口にしていた名前だ。親の前で仲が良いことを装いながら、でも頬を上気させ話していたのを覚えている。 私はやっぱりさつきちゃんには適わない。私は私と涼太が従兄弟だということを覚えてもらっていても喜べない。むしろ忘れてしまえばいいのにとさえ思う。 (相変わらず真っ直ぐだね) (?なんのこと…?) (こっちの話だから大丈夫) *20130222 私は男○豆腐が好きです prev / next ←BACK |