06

前回の失敗を踏まえ、現在私は掃除をしています。掃除なら消耗品も特にはないし、寺子屋でもやっていたこと。できないはずがない。


「さすがに掃除はできるか」

「坂田さん、さすがにバカにしすぎです」


バカにしすぎというか、失礼だ。どんなに料理ができなくても、落としちゃった卵の処理の仕方が悪くても、一応女なんだから。掃除機をかける、雑巾拭きをするなんて常識はわきまえてます。

問題といえば、タンスの上の埃。できることが少ないからそのくらいしっかり取りたい。取りたいのだけれど…!


「……お前チビだな」

「知ってます」


それほど高くないはずのタンスの上も届かないのです。なんてチビ…!え、先ほど神楽ちゃんがこのタンスの上に酢昆布を置いていたけど…えっと……。もしや、というより当たり前のように私のがチビフラグですよね。

人間性どころか見た目までまだまだ幼いとなると、家をでる前本気と知った両親が(最初は冗談だと思っていたらしい)血相変えて止めてきた理由がわかる気がする。………近所のおじさんが、よく小さい子と私にお菓子をくれた理由も、わかった気がする。


「まさか身長が仇になるとは…」

「どんだけ深刻なんだよ、どけ」

「ダメですよ、私が譲ると思ってんですか」


坂田さんは、私の駄目っぷりをまだ知らない。自分でちゃんと理解してるから、できることをしっかりやりたい。

精一杯手を伸ばして、不安定なつま先立ちをする。なんとしてもこれだけ…は………!?


「ったぁ…」

「ぎゃーすみません!!」


不安定なつま先立ち。奴がやらかした。後ろに立っていた坂田さんへ向かって体が傾いたのだ。たち直せるわけでもなく、そのまま後ろに倒れる体。

痛いのは覚悟していたけれど、後ろに坂田さんがいるとは思わなかった。それで私は痛くなかったのだけれど、さすがにまずった。と、思う。


「坂田さんお怪我は…!?」

「あー大丈夫。けど麻希乃ちゃんよぉ…」

「?」


坂田さんの赤い目が、私を見上げた。なんだかあの人の目に似ているな。似ているとはずっと思ってたけど、この状況はあのときそっくりだ。

木の上からの眺め。落下。衝撃。私の下にいた男の子。私を見上げる、赤い目。いい思い出とも悪い思い出ともいえないそれは、どっちにしたって私の中を渦巻いている。なんだか涙が出そうになって、堪える。


「背伸び禁止な」

「え、背伸び禁止…!?」

「できないことすんなって言いたいけどするだろお前」

「よくご存知で…」


この人には適わない。見通しちゃうところにも、赤い目にも。でも坂田さんと彼は別の人。あの人を記憶の片隅に投げた。




(シリアスは似合わないよね、やっぱり)(なんか言ったか?)(なんでもないですよー)


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*20121130
あくまでも平凡主だからアンケート答えてくださった人安心してくださいね!



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