02

さすがにこれはヒドいと思うわけですよ。私がアルバイトしたあんなお店やこんなお店の店長が私の出来の悪さを言いふらしてる、らしい。……酷いですよねこれ。

最近毎日のようにバイト探しをしていたけど全て無意味。どうやら私の出来の悪さは歌舞伎町公認みたいです。んなアホな。


「あー長谷川さんお久しぶりです」

「麻希乃ちゃんじゃん!ホームレス仲間が減って寂しいよ」


そう。私と長谷川さんはホームレス仲間で、何度かお世話になっている。長谷川さんはマダオなんて呼ばれているらしいけど、私のがまるで駄目だ。ホームレスなんて落ちこぼれた人の生活でさえ、満足にできないんです。

そもそも料理がろくに出来ない私に自立生活が無理でした。半年前、思い切って上京した自分を殴りたい。今更帰るのも両親に「やっぱり」とか言われそうで気が引けるし。


「長谷川さん、私もうバイトできないかもです」

「若いのに諦めたら駄目だって」

「いやいや、なんか歌舞伎町中に私の駄目っぷりが広まってるんですよ」

「あー……どんまい?」


長谷川さんもなかなかな駄目っぷりだけれどバイトが受かる確率は案外高い。以前幕府の役人だったっていうのがなんだかんだポイントになるらしいです。

それに比べバイトしかしてないのにオールクビな私はどうしたら。長谷川さんもオールクビだけど。

なんとしても職場を見つけたい。それも、クビ覚悟じゃない。一生働いていける場所が簡単に見つかったら苦労しませんけどね。


「そうだ麻希乃ちゃん。銀さんのとこにでも行ってみたら?」

「銀さん……?」

「下にはお登勢さんもいるし働き先になるかもよ」

「お登勢さん……」


お登勢さんに関してはどこかで聞いたことがある気もしなくはない。でも銀さんって人は全く知らない。初耳だ。

兎に角、ホームレスの先輩長谷川さんの助言には従っておこうと思います。一瞬だけでも、勤め先になるかもれないし。

長谷川さんに場所を教えていただき、身を翻した。万事屋に行こうとしての行為だったのですが、それがなんだか寂しくなって。


「長谷川さん…!」

「、どうしたの麻希乃ちゃん」

「ありがとうございました!今日のことも、今までのことも」

「なんにもしてないよ俺は」


優しいですね、長谷川さんは。自分だってしんどいのに私なんかに気を使う。だから私はいつも長谷川さんの期待に応えたいと思うんだ。




(今度こそ続けて見せますね)
(はは、じゃあもうクビ報告は受けないかな)
(えーとそれは……)

---------------
*20121022
友人だったら長谷川さんはとても素敵な人だと私は思うわけです

prev / next


BACK
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -