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衣服が畳めなくては家事手伝い失格ということで、再び真選組にお世話になりに来ました。アポなしですが、前回もそうでしたので多分大丈夫だと思います。なんたってトシ兄相手ですし。

ここにお世話になったのは短い期間だったがもうすでに見慣れた真選組の門を叩く。


「どちらさまで…麻希乃!?」

「トシ兄、昨日ぶり。雅さんに教えていただきたいことがあって…」

「帰れ」

「え?」

「今日は帰れ」


いつになく真剣な声音で、ドキリとした。浮ついたものじゃなくて、心が冷えるような畏怖するような、そんな類のものだけれど。

なんでって訊きたくて、口を開ける。でもその前に、彼が見えてしまったんだ。

トシ兄の後ろから覗く甘い栗色の髪に、赤い目。なんでも見通すような、赤い目。

それだけで十分だった。いろいろな出来事が、思い出が頭の中を駆け巡る。


「おま、麻希乃…!?」

「そ、ご…」


名前を呼んだ瞬間私の足は駆け出した。着物だとか、そんなことは気にしない。兎に角逃げ出したかった。

走って、走って、走って。万事屋までもう少し。一度だって振り返ってはいないけど、彼が追いかけているのはわかってる。だって、彼だもの。

久しぶりに走ったせいか、思い出したせいか、はたまたその両方なのかはわからないけれど呼吸が安定しない。少し、過呼吸気味かも、しれない。

あ、駄目だ。

視界がぼやけて、足元が不安定になる。足が地に着かないってこういうことか。なんて呑気に思って、誰かに後ろから抱きつかれて。

追いつかれたくなかったなぁ。でもまぁ、しょうがないか。そこで私の意識は途切れた。


♂♀


あの馬鹿2人を追いかけてたのはいいが、途中で攘夷浪士が現れたのはただただ自分の運の無さを呪うしかない。イライラする、そうだニコチン摂取しよう。

今まであいつらを会わせないよう努めてきたし、これからも会わないように近藤さんとも計画中だったのにこんなにアッサリ崩れるとは。イライラする、そうだニコチン摂取しよう。


「あれ?土方さんじゃないですか。麻希乃さん真選組に行ったと思うんですけど…会いました?」


男にしては高い、少し中性的な声が耳に届く。志村の言い方に、あいつはもう万事屋の一員なんだと今更実感させられた。

振り返れば忌々しい銀髪と地味な眼鏡。男2人とはむさ苦しいことで。

麻希乃が、総悟と一緒だということ。それからしばらく帰らないだろうということ。そのふたつを、言わなければならない。

万事屋が俺たちと同じように仲間思いだということは知っている。だからこそ言いにくい。


「すまねェ、麻希乃はしばらく帰らねーよ」

「すみません土方さん、また家事修行を頼んでしまって…」

「いや、違う」

「違うってどういうことだよ土方君?」

「…総悟と会わせちまった」

「お前ら同じ故郷だろ?問題ないだろ」

「そうなんですか?僕知らなかったんですけど」

「あ、うん言うの忘れてたわ」


呑気な会話にイライラし、胸元にある煙草に手を伸ばしながら口を開く。


「総悟と麻希乃は会わせちゃいけねーんだよ」




(俺たちがまだ武州にいたときの話だ)


20140201
昔話

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