11 「近藤さーん!」 「どうしたー?」 「お茶!煎れてみたんです!飲んでみてください!」 雅さんに見守られながら煎れたお茶は、普段見るお茶とあまり差のない仕上がりになりました。嬉しい。 見た目はとりあえず合格。ですが肝心の味が駄目ではどうしようもないので近藤さんに毒み…ゴホン、味見をしていただくのです。 小さな緊張が走る。湯飲みを口に持って行くのがスローモーションに見えた。そして喉が小さく震える。 さぁ、どうでしょうか。 「……」 「…どうですか?」 「…麻希乃ちゃんちの団子と一緒に出てくるお茶の味がする」 「お母さんの、ですか?」 「なんだか懐かしくなっちまったなぁ…」 空になった湯飲みを見つめる。遠い目をして優しく微笑む近藤さんに私はなにができるだろうか。 どうせ駄目人間で、なんにも出来なくて、結局迷惑しかかけられなくて。でもこんなので終わってしまうのはもどかしい。悔しい。 私にしかできないことだって、あると信じたっていいじゃないですか。 「近藤さん!」 「ん?」 「私、お団子も作ってみます」 「おー!そうか!それは楽しみだなぁ」 今度は近くを、私を見て笑ってくれてる。この期待に応えたい。応えなきゃいけない。 大丈夫。団子の材料と作り方は、ちゃんと覚えてる。両親が団子を作っているその光景が、とても大好きだったのです。今でも鮮明に思い出せるほど。 トシ兄に許された修行は明日の午前中いっぱい。みなさんへのお礼に、絶対成功させるんだ。 (材料はだいたいあるけど…あ、あれがない)(おい買い物行くならマヨネーズも頼む)(マヨラー治ってなかったんだ…) *20130928 この章ももうすぐ終わりです、近々長い章やりたいです、 ←BACK |