09

私の憧れた近藤さんはストーカーなんて行為に走っていたのですがもういいのです。少しも連絡をくれなかったから、その分元気だとわかって嬉しいことこの上なしというか。

気がかりなのは、彼だ。赤い目をした、彼。名前すら思い出したくない。実際出てきませんが。


「トシ兄ってさ、私の駄目っぷりちゃんと知ってるよね」

「………なんであの天パに敬語で俺にタメ?」

「坂田さんは、見知らぬ私を拾ってくれた人だからだよ」


正確には押し掛けた、だけど。

トシ兄といると、いい思い出も悪い思い出もゴチャゴチャになって溢れかえってくる。それに関して近藤さんも同じですけどね。

私やミツバ姉さんを置いていったこと、時々お土産が送られてきたこと、みんなで団子を食べたこと…すべてが懐かしい。

土方さんに連れてこられたのはどうやら台所みたいで、そこには一人の女の人。お茶を煎れているのでしょうか。手際がいい…!!


「おい」

「なんですかー土方さん」

「こいつは俺らの幼なじみなんだが…家事全般壊滅的なんだよ」

「え、壊滅的?久しぶりに会ってこの言われよう……」

「事実だろうが。それでお前に指導してもらいたいんだが…」

「構いませんよーじゃあちょっと着いてきてください。土方さんはお仕事に戻られて大丈夫ですよ。後は私におまかせください」


口調はゆるいけれど、謙虚な姿がミツバ姉さんに重なった。いつもそうだった。トシ兄のそばに居たくても、忙しいからしょうがないと笑っていた。困ったように、焦がれるように。

なんとなく、だけれど。この人はきっとトシ兄が好きで、でも一緒に居られないって思いこんでる人なんだと思う。

意識し過ぎでしょうか、でもそういうのってなんだか辛い。ミツバ姉さんの訃報を聞いてずっと気がかりだったのは実はトシ兄のことなのかもしれない。


「自己紹介遅れました、麻希乃です」

「麻希乃…?あぁ、あなたが……」

「?」

「あ、すみません。一番隊隊長がよく貴方のことをお話しなさってるんですよー。私は雅です」

「雅さん……よろしくお願いします!」


一番隊隊長が誰だかわからないままでとても気になるけれどもうどうでもいいです。私は私がやらなきゃならないことをしよう。

そして、本当に思いこみだったら申し訳ないけれど。トシ兄には遠慮しないで欲しいって伝えたいと思うのです。




(総悟が出張中で良かったっちゃあ良かったか)
(沖田隊長と麻希乃ちゃんを会わしてはいけないんでしょうねー…)


*20130219
赤い目をした彼、沖田君です



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