08

警察とは世の規律であり、犯罪を取り締まる役職である。そうであるからして、警察官とは常に恥じない行いをしなければならない。

遠い昔、警察になろうと故郷を出て行った人が言っていた台詞。私はその人を尊敬していたし、その人の言動はそのものだった。

だから今、実際の警察を見てなんとも言えないのです。


「だ、大丈夫なんですか坂田さん」

「あ?なにが?」

「なにがって普通に爆音聞こえましたけど!?」

「いつもどーりだからこれ」


尚更よろしくないのではないか。それとも、私とあの人の警察に対しての理想が高かったのか。

なんにしても、ここで生きていけるとは思えない。下手をして爆発にでも巻き込まれたら、私は星だ。星になる。

そんな危機を隣り合わせに真選組で女中しようとは思いません。


「と、いうことで坂田さん帰りましょう!」

「言い出したのはお前だろーが」

「はい!でも死にたくない!」

「死にゃしねーよ仮にも一般市民巻き込むようなことは…あ、でも万事屋って一般市民……?」

「一般市民じゃないんですか!?なに考えこんじゃってるんですか!?」

「いやー今までいろいろやらかしてるからね、際どい」

「死ぬ!私これから死にますね!」



「うるせーよ!!!」



第三者の介入により、坂田さんとの口論は終わった。早かれ遅かれ女中申請は決定みたいです。通るかどうかは別として。

やけに重々しい門がゆっくりと開く。ギィ…と錆びた金属が触れ合う音がどうにも聞き難い。


「多串君久しぶり」

「えっと、初めまして多串さん。万事屋でお世話になってる麻希乃です」

「いや俺多串じゃねーから!」


違うんですか!?と坂田さんを見れば必死に笑うのを堪えている。どうやら嵌められたららしい。

とまぁ、そんなことはとりあえず置いといて、私は多串さんを知っている気がするのです。名前こそ知らないものの、似ている容姿の人を知っている。


「おい、麻希乃……つったか?」


突然の問いに、コクンと頷いた。私の名前を言うトーンがなんだか懐かしい。

そうだ。やっぱり、知っている。開いた瞳孔に整った顔立ち、短いけれど艶やかな黒髪。これは間違いなく


「トシ兄………?」

「やっぱ麻希乃か。なんで万事屋といんだよ」

「カクカクシカジカだよ」

「わかるか!」

「ちょっと待って2人知り合いなの!?銀ちゃん置いてけぼりなんだけど」


私の前ではいつも大人な坂田さんだから、今のリアクションはとても珍しい。トシ兄からしたら煩わしいだけらしく睨んでいたけど。


「幼なじみです!トシ兄にはいつもお世話になってたんですよー」

「本当に妹みたいなもんだったしな」

「ふーん、なら任せてもいいだろ。じゃーな、頑張れよ」


ドライ過ぎてて少しだけ寂しい。でもいいんだ。どうせ帰るんだし。

私は今専ら坂田さんにギャフンと言わすことしか眼中にないのです。




(トシ兄よろしくね)(いやだからなにが?)


*20130102
本年もよろしくお願いいたします

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