くらり。目眩がした。

重い身体を起こし辺りを見渡す。真っ白い天井と壁、床で構成された部屋の中にはさらに白い家具ばかり。私が寝かされていたベッドも骨組みから布団まですべて真っ白だ。

唯一目についた色はサーモンピンク。私の髪。


「……えっと…」


私は、誰だっけ?思い出そうとすれば痛くなる頭になぜか笑みがこぼれた。ただし自嘲だ。


「愛梨…?」

「!?」


突然聞こえた声に振り向けば、私と同じ…いや、少し私よりも濃い色の髪をもった男がいた。

その長い髪は丁寧に三つ編みされ、にも関わらずアホ毛がピンとのびている。黒いチャイナ服は、この部屋では一段と目立つらしい。


「愛梨…起きた、の?」

「えっと…あなたは……」


だれ?


掠れた声で言えば男は悲しそうな表情を見せた。喉が渇いていて、どうしようもなく痛い。

自分の名前がわからない。これが意味することがわからないわけではない。ただ、受け入れがたいのは事実だ。


「えっと、私は愛梨って名前なんですか?」

「うん…」

「あなたは?」

「…………俺は神威。あんたの双子だよ」

「神威…うん、覚えた」


なぜ記憶を失ったとかそういうことはわからない。わかったら記憶喪失ではないと思うが。

でも本能というのは身体が覚えているみたい。神威が泣きそうな顔をしているのは嫌だった。

だから、私のできる精一杯の笑顔で彼と接しようじゃないか。




(懐かしい笑顔に心が弾んだ)(例え愛梨の中に俺という記憶がなくても)


*20130104
家族設定とかそういうの大好きなんです



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