「こんなの絶対おかしい」


燦々と太陽の光が降り注ぐ。肩に掛けてあるタオルで汗を拭い、軍手をはめ直した。

本日の風紀委員会の仕事内容は、なぜか雑草狩りです。なんてこった。

我が中学校にも清掃を担当するはずの美化委員なるものがある。先日委員会活動が行われたばかりなのだが、ここら一帯鬱蒼とした雑草が茂っている。

私としてはどうでもいいのだが、許せないのが風紀委員長顧問もとい校長先生様だ。

だがしかしもう一度言わせて欲しい。私たちは風紀委員。こんなの絶対おかしい。


「しょうがないでしょ、これも“風紀”なんでしょ?」

「美化委員会はなにしてるんの」

「報告書には、掃除道具の整備って書いてあったけど…」


少なくともここから一番近くにある掃除用具入れは規定の数より箒が二本少なく、ちりとりに至っては無かった。そしてもう役目を終えただろう使い古された雑巾が五枚。

他の用具入れは確認してないけれど、きっとここと同じように蔑ろになっているのだろう。

この有り様で報告書には予定業務終了と記入してあったのだから呆れてしまう。後日他の委員会の活動内容も確認することが決定した。


♂♀


雑草が入ったゴミ袋が三個になった頃、新たなゴミ袋を用意しながら書記が呟いた。


「仕事がちゃんと出来ていないっていうのは“風紀”が乱れてるってことになるの?」


風紀委員ですら、委員長の私ですらその定義は曖昧だ。

突然創設されたくせに仕事は盛り沢山で、正直なところ納得もできないしどうやら先生方も納得させようとしている様子はない。単なる雑用。

学級では学級委員長が雑用だとか言われるけれどそんなのはまだまだ可愛い。学校全体の雑用なんて事務員の仕事だろうことを、我々風紀委員がしなくてはならないのだから。つくづくわからない。

ただひとつ言えることがあるとするならば、理由なんて最初からないということだ。


「なんでもいいんだよ、あの人の理想と逸れてたらそれだけで乱れてるんだから」

「つくづく嫌な学校ね」

「でもあのお方の学校なんだから、当たり前だよね?」

「校長が何者かを知らない。それが一番の問題なんだよ」


私はとても”運“が良い。毎年おみくじで大吉を引いたり、くじ引きで必ず当たりを引くくらいには。

ただ、風紀委員という役職に就いたことに関しては流石に不運だと思う。

その不運の原因が“神様のちょっとした悪戯”なら納得できやしないだろうか?その神様と私が親しかったら、あり得る話ではないだろうか?

つまるところ、私は特殊体質なのだ。

そのことを薄々察してるであろう風紀委員二人がどう思っているかは知らないけれど。頬を鋭い風が掠った。


「……何考えてんのか知らないけど、私は認めるよ。何者かじゃなくて、伊勢葵が好きなんだから」

「私も私も!葵ちゃんじゃないと駄目だし!」


副委員長は目を合わせずに、会計は笑顔で言う。つられて思わず頬が緩む。


「あー、適わないなぁ…二人ともありがとう」


二人のことを私はまだ知らない。




(薄々気づいてるんだよ)


20140208
雪がやばいですね

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