「華奈、起きてる?」

「ん…おはよう」


目を開けた瞬間広がった橙色に幸せを感じたのも束の間で、昨日のことを思い出して一気にブルーになる。

お兄ちゃんが帰った後お母さんに連絡して詳細を聞いた。今日は引っ越し準備をして、明日は学校のみんなにお別れを言いに行きなさい。お兄ちゃんが家まで迎えにいくから。って。それだけだけど。

いつ帰ってこれるかわからない。次にいつ3Zのみんなに、神威に会えるかわからない。悔しいし泣きたいよ。でも、ワガママ言ってちゃだめなんだ。


「神威、あのさ…」

「……なに?」

「私たち、別れよう…か」

「………」


繋がりは切っておこう。未練になるから。中途半端なことしたくないから。

でもね、神威。なにも言わずに家を出て行ったことが、無性に悲しかったんだよ。


♂♀


いつも通り接してくれたみんなに、感謝しきれない。明日から会えないなんて感じさせないほど、いつも通り。

でも、


「華奈ちゃん」

「ん?」

「みんな、待ってるからね」


下校の時にこれはないんじゃないかな、泣いちゃうじゃん。私の親友である妙ちゃんにこの役目を託すのも彼等らしい。

もう、大丈夫だ。日本を出ても大丈夫。


「あ、きた」


エレベーターが開いて一番に聞こえた声。昨日の朝、一番に聞いたのと同じ声質。

なんでって言う前に抱き締められた。それもうんと強く。告白した、あの日以上に。


「華奈はなにが怖いの?」

「え?」

「別に遠距離恋愛でもいいじゃないか」

「遠距離って……!」


限度があるだろう。国内での遠距離恋愛でもいろいろと失敗談があるのに、私たちは国籍さえ違ったものになるのだ。

好き嫌いの問題じゃない。その距離が私たちの思いの距離を表してるんじゃないかって不安になるんだ。


「華奈は俺のこと好きなんじゃないの?」

「好き!…だけど……」

「それだけで十分じゃん。それにもし不安っていうなら」


右手を持ち上げられて、薬指になにかをはめられた。指輪だって理解するのにそう時間はかからなかった。


「俺のって印ね」

「え、え?」

「いつかちゃんと左手の薬指のための指輪も買うから」

「神威……」


一緒にいられないのはきっと辛い。不安で、愛おしくて、苦しくて、いろいろなものに押しつぶされそうになるんだろう。

それでも、神威は私を選んでくれた。だから私も、ちゃんと選ぶよ。




(なぁ母さん、今華奈がリア充してて非常に連れ出しにくいんだけど)
(今お父さんと買い物中だからまたあとで電話して)
(ちょ、まっ!!!(母さんと父さんも楽しそうだなおい!))


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*20121111
影から見守るお兄ちゃんがどうしようもなく可愛いなと思って最後やらかしました…。遠征帰りの変なテンションのなか書いちゃったけど完結したから満足です、自己満です。そして日付またいじゃってごめんなさい(**)
拙い文章ですが、読んでいただきありがとうございましまた!







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