神威が来て初めての祝日。

家でゆっくりとしているだけでも、今日は時間が過ぎるのが早く感じて。隣に神威がいるだけで緊張するというか。なにこれ青春。

要するに一日中心拍数高くて、恥ずかしくて、変にテンション高くて……。なにこれ乙女。

──ガチャ

突然玄関のドアが開く音がして、2人同時にそっちを見た。指紋登録をしているのは家族だけだ。

え、ちょっと待って。つまりそれは誰か帰ってきたってことですか?いやでも両親は有り得ない。

ここまで考えて、最悪な事態を想定した。私の大嫌いな、あいつしかいない。


「華奈元気してた…誰だよそいつ」

「な、んで」


予想通り、私の大嫌いなお兄ちゃんで、とんでもないシスコン野郎だ。この人のせいで高校に行くまで男子と話したことがないって言っても過言じゃない。

そんなお兄ちゃんが、男と…彼氏と同居なんて許すはずがない。


「俺の質問に答えろ。誰だそいつ」

「あんたこそ誰?俺の華奈と随分親しいみたいだけど」

「(神威さんんんん!?)」


俺のってところが強調されてて嬉しかったけどそれはそれ!神威が乱入してきたことでより険悪な雰囲気になっちゃったよ!

そんでもってなんか私が二股したみたいで嫌なんだけど!お兄ちゃんはシスコンだけれども残念ながら私ブラコンじゃないから!神威だけだから好きなの!

関わりたくないとは思いつつも、この二人に任せたらもっと大変なことになる。あーでも会話に入りたくないなぁ……


「話にならねぇおい華奈どういうことだよ」

「……お兄ちゃんはずっと前に出てったじゃんなんで今更…」

「関係ねぇだろ」

「大ありだよ。大学はどうしたの?てゆーかお兄ちゃんが寮生活するって言ったとき引っ越し準備したの私だからね?覚えてないの?」

「それこそ関係ねぇ」

「わかんなかった?散々迷惑かけてるんだから関わらないでって言ってるの」


台詞に詰まったお兄ちゃんをみて、3Z所属の私をなめるなと毒づく。

屁理屈大好きで訳わかんないこと言ってる人たちを相手にしてるんだ。お兄ちゃんみたいな真面目人間を言葉で負かせるなんて容易い。


「あーくっそ。とりあえず出る準備しろ」

「なに言ってんの?意味わかんない」

「引っ越すんだよ、外国に」


…………


「「は?」」

「この家も売り払うから住めねぇよ」

「どういうこと」

「そういうこと。母さんにでも聞けよ」


冗談を言う顔じゃない。そもそも売り払うなんて、冗談じゃ言わない。


「じゃ、明日また来るから」

「ちょ、待って!」


返答もせずに出てったお兄ちゃん。わかんないよな何もかも。

ただ、3Zのみんな、そして神威と別れることになる。それだけは、わかった。それだけしか、わからなかった。




(やだよ、もっと一緒にいたいんだよ)

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*20121101






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