※虐待表現微かに有



もうね私は死んでもいいの。死んじゃいたいけど死ねないの。彼の為の私なの。
わかんないよ、と平太は言った。彼女が誰を待っているのか、平太にはわからない。ボロボロに傷付けられた彼女を、一体誰が、誰が救うというのだ。
「僕はもう君を見てるのが辛いよ」
この街なんて彼女の両親なんて死んでしまえばいい。彼女を傷付けるもの全て死んで消えてなくなってしまえ。恋愛感情はない、ないけれど、平太は彼女の幸せをただひたすら願っている。
ふふ、と彼女の笑う声が聞こえた。綺麗な声だった。何でもそうだ、彼女の持っているものは美しい。声も笑顔も心もきっと体も。
「平太だけは、優しいんだね」
ありがとうと彼女は長袖で傷を隠して笑った。首元に微かに痣が見える、昨日はたしかなかったはずのそれ。ああひどくにくらしい。平太は美しいものを美しいと言えないこの街が、彼女の親がこの世の何より誰より憎たらしく強い嫌悪以上のもの、憎悪以上の感情を抱くほど、大嫌いで大嫌いだ。
「あの子みたい」
彼女を救ってくれるという人が誰かでもいるのなら、早く迎えに来てやってほしい。平太では駄目なのだ。彼女は"あの子"を待っている。平太の知らない誰かを、彼女はずっと待ち望んでいるのだ。本当に迎えに来るかも、わからないのに。
辛いよ。再び口に出すと、平太の目からは涙が出た。久方振りに出た涙だった。あぁ辛い、辛いのだと自覚すると、平太はどうすることもできずに立ち尽くし、ぼろぼろ泣いた。多分きっと、いや確実に、親愛の意味で平太は彼女を愛している。
「平太、平太泣かないで」
ひたりと彼女の手が平太に触れる、その手を平太は本当に美しいと感じる。愛おしい人。こんなにも、こんなにも気持ちは溢れてくるというのに。
「孫次郎」
願うのだけは自由なんじゃないかと、平太は思う。自由なはずだ、だってこの思いは誰も知らない。優しく平太をなだめてくれる彼女だってこの思いを知る由はないのだ。平太は拳を握り締めた、彼女の声はもう聞こえない、それでも、いやだからこそ平太は。
(どうか、どうか)

遠いどこかで誰にも知られず幸せになって。











今考えてる小説のちょっと前の話のつもりで書いた。こっからぺい孫になる。
なんでか孫と平太の組み合わせが好きなのです。
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