触れてよ、と食満が言ったのは千年以上も前だ。どうして今更それを思い出すのか、中在家にはもう理解できない。
手を伸ばしてみるけれどそこに彼の手はなかった。存在ごと失ってしまった、今はもう食満留三郎なんて人物はいないのに、その唇を思い出す。雨音が彼の声に似ていたのが悪いのだ、なんて残酷な世界だ。

寒いよ、と中在家が言ったのは千年以上も前だ。どうして今更それを思い出すのか、食満にはもう理解できない。
腕を伸ばしてみるけれどそこに彼の体はなかった。存在ごと失ってしまった、今はもう中在家長次なんて人物はいないのに、その声を思い出す。雪が彼の体温に似ていたのが悪いのだ、なんて残酷な世界だ。

(彼はさみしい人だった)

(彼は寒がりな人だった)

(その体はもう満たされているのか)

(その体はもう温まってしまっているの?)

(会いたい)

(さよなら)



(さよなら)














お互い転生しているのに気付かない、気付けない二人。
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