川西は本当に彼の人を愛していたのだと、それは残された後輩たちとて理解できるものだった。例えどれほど遠い存在となってしまっても、川西の彼に対する愛情は変わらない。卒業して半年、それを何故だか強く感じるようになる。
今頃は、川西も彼の人もどこかの忍者隊で各々力を発揮しているはずだ。二人とも、決して弱い人ではなかった。六年間保健委員会に所属していたこともあって忍者隊ではかなり重宝される存在となるはずであろう。今の乱太郎も伏木蔵も医療の知識や毒の知識に長けているからと、たくさんの城から呼ばれているほどなのだから。
あと何年後だろうか。
沢山の薬を整理しながら、伏木蔵は思う。
川西先輩が彼の人を連れ攫いに行くのは。
半年前、川西が卒業する前夜。たまたま用があって保健室に向かっていた伏木蔵は、乱太郎と川西の会話を聞いてしまった。内容は川西が彼の人を将来攫いに行くという話
そうだろうな、と伏木蔵は、常々思っていた。川西が彼の人に向ける愛情は異常を越したものがあった。だから川西が彼の人を連れ攫うということに驚きはなかったし、それを本音では了承したがっていた彼の人の心情もすぐに想像することが出来る。
川西と彼の人は、本当に心の底から愛し合っていた。表に出すことがなかっただけで。
薬を整理する手を一度止め、ぼんやりと部屋の隅へ視線をやる。角には埃が微かに溜まっている。
(川西先輩)
息を吐き出して、立ち上がる。近くに置いていた箒と塵取でさっさとその埃を回収すると、襖へとゆっくり歩いていく。
――――卒業しても尚、そうして彼らは愛し合うつもりなのだ。



襖をがらりと開けると、外の風がぶわりと入り込む。そろそろ秋も近いようだ。空気が最近冷たくなっていく。
そうして刻々と、平和でいられる時間が削られていっているのだ。
(川西先輩)
この時彼は、どんな心情だったんだろうか。伏木蔵にはそれを推し量ることは出来ない。自分の知る川西という男は、冷静でありながら時々ぶっとんだことを考えるような人であったから。
廊下に少し出て、塵取の中に溜まっていた埃をはらはらと地面に落としていく。
(僕だって)
この秋が過ぎていくのに、どれほど時間を要するだろうか。大した時間はかからないはずだ。いつものように忍務を行って勉強をして鍛錬をして、冬を過ごせば、伏木蔵は雑渡の率いる忍者隊に属することになる。
もう何もかも思い出す日々は来なくなるのだ。
(僕だって)
川西先輩のこと、好きだった。
そう思い返す日すら、来なくなる。



川西と彼の人は幸せであっただろうか。将来もまた、幸せでいられるだろうか。
伏木蔵は最後にそれだけを考えて、目元を腕で擦る。それから踵を返し、部屋に、戻っていく。
地面に落ちた埃は土に混じってもう姿もわからなくなっていた。それが将来の彼らのことを描いているようで、伏木蔵はどうしようもなく、ぱたりと襖を静かに閉じる。
それだけだった。















最近感情のままに書きすぎだろ自分…全く理解できないもんばっか書きよってからに。
つまるところ伏さこは喋らない、静かな片思いがいいのです。切ないも苦しいもなく、ただだんまりとした恋。そしてさこ数前提。
伏さこの静かな片思いはあると思います。誰か書いてくんねーかな。
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