ひどいよ、と泣いたのは四郎兵衛だった。何がひどいものか。左近には理解しかねた。目の前に置かれた状況についてを言っているならば、四郎兵衛はさっさと学園を去るべきだ。目の前の死体など六年にもなれば慣れたもの。
でかい図体をして泣くなと左近は怒ったが、それでも四郎兵衛が泣き止む気配はない。四郎兵衛はわかっていないのだ。そんなでかい図体でしかもぎゃんぎゃん泣いていたら、新たな敵に見つかるのではという可能性も。これは早い内に三郎次・久作ペアと合流した方がいい。左近が四郎兵衛とこうしてペアを組んだりすることは一度もなかった。故に四郎兵衛の思考回路は理解できない。さっさと久作に引き渡した方が良さそうだ。
「ひどい、ひどいよ」
未だに泣き喚く四郎兵衛の手を取って、左近は走り出す。三郎次らはもう合流地点にいるだろうか。彼らの方が敵の戦力的には楽であったはずだが。
そう真剣に思考を巡らせている中で、四郎兵衛は相変わらずだ。ぎゃんぎゃん泣く。そりゃもうぎゃんぎゃん。六年生にあるまじき姿だ。いや、彼らの内誰かも、同級生の前ではこんなに泣いていたものだろうか。いいや、それにしても今は忍務中だぞ?普段ならば有り得るが、忍務中にだなんて、絶対に有り得ない!
「っ四郎兵衛、お前いい加減に」
「皆どうして左近を傷付けるの!」
あまりの大泣き具合にとうとう腹が立って仕方なくなってきて、思わず足を止めて怒鳴ろうとしたらその言葉だ。左近はどうしようもなく目を見開く。頭の中に浮かんだ文句の数々が泡のように、ぱちんぱちんと消えた。
「左近は何も悪くないのに!」
どうして、どうして!ひどい!ひどい!
それを境に四郎兵衛の泣き声は更に音量を増していったが、左近にはそれを止めることが出来なかった。どうして止めることなど出来ようか。左近は泣くことさえはしなかったけれど、四郎兵衛の手を強く握り締める。それに応えるように握り替えされた手の力強さが、ぎりぎりのところで左近に己を保たせた。















左近の毒の調合術の素晴らしさを見抜き暗殺しにやってくる忍を撃退。とかだったらくそ禿げる。
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