三之助が泣き出した。びゃあびゃあ泣き出してまるでどこぞの一年生みたいにおっきい口開けておっきい声出して鼻水ずるずる出してびゃあびゃあ泣いた。その光景にどうして驚かずにいられようか。いつも大体ぼうっとしているやつが、理由もなく突然泣き出して。しかもその泣き方が大変豪快だと来た。
「さっ三之助!どうした!大丈夫か!?」
一番最初に声をかけたのは、迷子仲間の左門だった。お互い繋がれたままの縄はそのままに、慌てて駆け寄ってその場に座り込んでいる三之助に合わせてしゃがみこむ。それでも三之助はびゃあびゃあ泣いた。左門のあったかい手で更に泣いた。
「おい、三之助!なんだよどうして泣くんだよ、泣き止め!馬鹿!みっともねぇ!!」
二番目は保護者である作兵衛だった。二人の縄はしっかり握ったまま左門の横に座り込んで乱暴な言葉を投げかける。しかし、そういう割には表情はすごく心配そうだ。そのギャップに三之助は更にびゃあびゃあ泣いた。
「三之助、何処か怪我した?大丈夫?痛いのか?三之助、泣いてちゃわかんないよ」
それから少し遅れて、数馬もそうやって声をかけた。本当に怪我をしているのではと思って一応考えられる箇所に触れて反応を確かめる、その優しさに三之助は泣いた。更に更にびゃあびゃあ泣いた。
「三之助」
藤内は特別慰めるような言葉も心配するような言葉も言わないで、ただ近くに寄って空いている場所に座った。そして何も言わない代わりに、ぽんぽんと三之助の手を握り締める。涙でじっとりと濡れていた手だったけれど、藤内は気付いていないようだった。それからぎゅっと強く握り締めてやる、その手の力強さに、三之助はもっと泣いた。びゃあびゃあ泣いた。
「三之助、何があったんだ?」
そして孫兵。孫兵は一度ジュンコをたまたま持ち歩いていた小さな木箱の小屋にしまってから、駆け寄って顔を覗き込んだ。皆が皆それぞれ慰めている中、孫兵にはもうどうすればいいかわからない。だから孫兵はあくまで見つめるだけだった。そんな中、一瞬だけばちりと三之助と目が合う。安心させるように少しだけ笑ってやると、三之助は安心したのか更にもっとびゃあびゃあ泣いた。ずっとずっと三之助は泣き止まないままだった。




(ああ、俺にはこんな優しい人たちがいて)
脳裏に浮かんでいるのは六つの後ろ姿。ひゅうひゅうと揺れるそれぞれの髪が、三之助はいっとう好きだった。その人の性格を現しているようで。それが彼ららしくて。
(俺は、何が出来るだろう。何が残せるだろう。何を、してやれるだろう)
それぞれから送られる手が、言葉が、自然が、とても心臓の置くの奥にじんわり染みた。涙よりもそれは熱くて熱くて、このまま溶けて死ぬのだっていいかもしれない。三之助は泣く。びやあびゃあ泣く。
(ああ、みんな、みんな)
ごめんね。ごめんなさい。
泣きながら三之助は必死にそう訴えかけてみたのだけれど、結局彼らにそれが伝わったのかわからないまま、三之助の泣き声が三之助が泣きつかれ眠るまでずっと、ずうっと続くことになった。











初/音/ミ/ク「デ/ンド/ロ/ビウ/ム・/フ/ァレ/ノ/プシ/ス」がイメソンのつもりだったのに全然違った。
三年生で突然泣き出して驚くのは三之助と孫兵かなあと。ちなみに三之助だったら黙って頭を左門と一緒にわしわし撫でてやると思います。
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