泣いているのかどうか、なんにもわからなかった。びゅうびゅうと風に揺れる長い髪が視界を邪魔するばっかりだ、今彼がどんな顔をしているのか見せやしない。
(いや。たぶんあなたも、わざとやっている。はず)
自ら望んで手を伸ばして、その髪を払えば。あるいは、名前を呼んでこちらへ振り向かせれば。彼が泣いているのなら抱き締めてやれたし、笑っているのなら一緒に笑ってやれたと思う。しかし体は不思議と動くことをしなかった。脳が命令しても、聞きやしない。ただぼんやり風に流れる髪を眺めるばかりだ。
たぶん、きっと、仕組まれていたように思う。
(ずるいなあ)
ようやく振り向いた彼は、なんでもないことのように次屋を見下ろして、ぽんぽん、と頭を撫でた。
反射的に、笑う。
「中在家先輩」
彼は首を傾げた。
「大好きです」
すまん、と彼が呟いた気がしたけれど、次屋の耳にはなあんにも届いてこなかった。










ぜえんぶ分け合いたい次屋。
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