肌を合わせることで何かを確認したかったのだろうけど、それが何だったのかはもう思い出せない。別に何でもなかったような気もしなくはない。ただぎゅうと互いに抱きしめあえれば良かった、最終目的はそれ以外無いように感じられていて。
「痛いよ、文次郎」
立てられた爪に鼻がつんとした。見えない顔ごと抱き締めてやると、情けない嗚咽が聞こえた。どうしようもない。互いに互いを救う術などないのだ、歯をたててやれば痛えよと言葉が聞こえた。それでも互いに離してやるつもりはない。
その勢いで深くの深くまで重なり合ってしまえばよかったのだけれど、寒いからと言う理由でやめた。外ではびゅうびゅう風が吹いていた。薄く開けたままの襖からも侵入してきて寒い寒い。
そうでなくても寒いし冷たいのにな。
「仙蔵、」
「なんだ」
「…なんでもねえ」
「そうか」
「すまん」
「文次郎」
「なんだ」
「…いや」
「……そうか」
たてた爪から、歯から熱さが伝わってきてくれればよかった。それでも互いが冷たいばかりだから結局無意味。抱く力を強めると、深くまで繋がらずともひとつになれるような気がしていた。見えない顔は今どんな表情をしているだろう。
二人して布団に潜り込む。びゅうびゅう風に紛れ込んでくる化け物だって今は怖くない。嗚咽がようやく止んだからその髪に頬をこすり寄せると、文次郎の手の力が緩んだ。ありがとう、とどちらからともない声が聞こえた。
深く繋がらなくてよかったね。
本当は、中まで侵入したらお前を傷付けてしまいそうだったから、なのだけれど。
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