馬鹿じゃないの。そう言われて三之助は笑ってしまった。うん、そう馬鹿。俺馬鹿だよ、馬鹿で結構、馬鹿だもん。
数馬は馬鹿馬鹿自分で繰り返すなよと少しだけ怒った後、俯いて黙り込んだ。沈黙が重かったけれど三之助はこの後の展開を予想できている。ついつい緩みかけてしまう口元を頑張って抑えて、三之助はちょっぴり視線をそらして声を待った。風がぶわりと吹いて髪の毛がばさばさ揺れる、その声にまぎれて数馬が三之助と名前を呼んだ。
「ごめん」
緩む口元をついに抑えきることが出来なくなり、三之助は笑みを浮かべ片手を伸ばす。わしわし頭を撫でてやると、数馬はとうとう泣き出した。泣かなくていいのにと思うけれど数馬だって女の子だ、三之助は素直にその涙を受け止める。
「ごめんね」
有り難うを数馬が言う前に、三之助は両腕でぎゅっと数馬を抱き締めてやった。腕やら腰やら体のあちこち痛むけれど、数馬の涙に比べればこんなことなんでもない。なんでもないのだ。
「数馬が無事で良かった」
髪の毛に顔を埋めると、数馬が微かに震えているのがわかって、ああどうか彼らが来ませんようにと三之助は願った。女の子の涙は特別なの。男には見せたくないの見られたくないの。
それでも数馬は不運であるし三之助に迷子癖があったのもあって、二人はすぐに見つかった。犯人ぶっ殺すと作兵衛と左門は言ったけれど女の子まで殺せるかしら、そんなことを思いながら三之助は数馬の背中を撫でてやった。大好きだよ、の声が聞こえた気がした。
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -