手をつないだ、彼の手は冷たかった。おまけに鍛錬の成果も出てかごつごつと固く少し痛い。それでも伊作は手を離さなかった。息が白い。
「あったけぇ」
鼻を啜り、ぽつりと留三郎が呟く。そんなことないよと伊作は返したけれど、心の中では当然だと思った。つい先程まで、伊作は部屋にいて手を温めていたのだ。温かくないはずがない。
留三郎はもう一度だけ鼻を啜って、それきり黙った。雪はしんしんと降っている。音は無いのに、静かに存在を表すのだから雪はずるい。
「留三郎」
外気に触れて、伊作の手もそろそろ冷たくなってきた。しかしそれでも、伊作は留三郎の手を握ったままだ。息を吐き出す。白い。
「大丈夫、…きっと君は強くなるから」
声が震えていないかが不安だった。ガチガチと鳴りそうになる歯を必死で抑えて、それだけ言って伊作もまた黙り込んだ。しんしんと降る雪は強まっているようだ。留三郎の頭にはやや多めに、伊作の頭には少しだけ雪が積もっている。
沈黙が続いた。
何かを話そうとしても、伊作は寒くって声を出すことが出来ない。一度だけ鼻を啜って、、留三郎の手の感覚を感じた。先程よりも更に冷たいかと思えば、ほんの少し、ほんの少しだけ温かくなっている。
伊作は留三郎を見なかった。
「俺」
沈黙を静かに被ったのは留三郎。ずびっと大きく鼻を啜る音がする。寒さからか、彼の手は小刻みに震えている。
「絶対に、強くなるから」
だから、と続けてはみるけれど、その後に言葉は続かなかった。鼻を啜る回数ばかりが増えていく。伊作は寒いな、と思った。無意識の内に、留三郎の手を強く握る。
「冷たくなってきたね」
こくん、と頷く。
「戻ろっか」
うん、と留三郎は言った。その時に初めて、留三郎は伊作の手を握り返した。その手はもう冷たい。漸く伊作は留三郎を見た、その見えた様子に伊作は小さく笑う。留三郎は前を見据えていた。
「暖けぇ」
















手を温めていた→留三郎と手を繋ぐため、暖めるため。
留三郎の頭にはやや多めに→留三郎の方が長く外にいた。
とゆーのが伝わっていれば、それでよし。
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