「ほい、砂糖多めカフェオレ」

「わぁありがと、好きなの覚えてたんだ」

「とーぜん、なまえが髪自然乾燥派なのも忘れてないぜー」


 でも風邪ひくから駄目ーと言いながら用意していたドライヤーを早速つけて私の髪を乾かし始める。
 ここまで来ると流石に……


「ほんとハイスペックすぎて女子としても負けた気しかしない」

「なんか言ったー?」

「何も言ってないよ」


 彼と付き合い始めたのは去年で、秀徳の三年でバスケ部のマネージャーをしていて知り合ったのだ。
 今でも緑間くんの相棒として、チームを支えている彼に告白されたのはインターハイの後、丁度今ぐらいの時期だ。

 そうか、もう一年も経ってたのかとカフェオレを一口啜ると同時に髪乾かし終わったらしい和成がドライヤーのスイッチを消した。
 早々にそれを片付け隣に座った和成が、私がマグカップをテーブルに置いたタイミングで抱きしめてきた。
 腰に腕を回され甘えるように私の頬に自分の頬をすり寄せてくる。


「なまえいい匂いする」

「和成も同じ匂いでしょうが」

「なんかいいなそれ」

「何言ってんの」

「同じ家で生活してるみたいでさ、あー同棲したい」

「……なにいってんのバカ」

「照れてるなまえも可愛いー」


 最近、というか付き合い始めてから何度も思ったことがある。
 私、和成といたら腑抜けになりそうだと。寧ろ今までなってないのが奇跡だとしみじみ思う。
 本人無自覚でも100%超えて120%で答えてくれたりするの普通だし。
 なんというか、本当に何でこんな年上としてというより女子として申し訳なるくらいの人とお付き合いさせていただいてるのかとまで思うほどだ。


「俺といんのに考え事ー?」

「和成の事だけどね」

「まじで!?」

「まじ」

「すっげぇ嬉しいんだけど目の前の俺に構ってほしいなぁ」

「ごめんごめん」


 ぎゅっと抱きしめ返すと「可愛いから許す」と言われた。これも毎度思うのだが可愛い要素がどこにあるのか教えてほしい。
 そう思いながら聞き慣れたはずの可愛いについ嬉しくなってしまう。
 そんな自分に呆れていると未だ引っ付いてる彼の髪から同じシャンプーの匂いがした。


「……私も同棲したい」

「どうしたの急に、なまえもそう思ってるなら全力で物件探すけど」

「お互い忙しいから我慢ね」

「えー」


 本気で残念そうな声を出す和成についつい口元が緩む。
 結局のところ同じような思考回路してるなぁなんて思いつつ、抱きしめ返した腕の力を少しだけ強めた。


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