「月下美人だよねって、スガ先輩に言われた」


雑誌を読んでいた蛍が顔を上げて、意味が分からんという表情をしてくる。


「それ花じゃなかったっけ?」

「うん、そう」

「明らかに名前負けしてるよそれ、しかも花なんてたちじゃないでしょ」


グッサグサと言いたい放題言っているが、それに関しては私も思ったので何も言い返せなかった。
ベットの上でゴロゴロとしていた私はゴロリとうつ伏せになる。
肘をついて上体を支えると、こちらに向いている視線と再び交わった。


「ゲッカビジンの花言葉は、はかない美、儚い恋、繊細、快楽、艶やかな美人」

「そうなの?」

「うん、だからね、私もなんか違うーって笑って返したんだけど」

『謙遜しなくてもナマエはべっぴんさんだべ、それに―――』

「蛍の隣に居る時が一番綺麗に笑うから、だってさ」

それに「月島のミョウジに月はいってるしなー」なんて言ってた。
スガ先輩、なんてこと言ってくるんだって思った。
衝撃的過ぎて、聞いた時は赤くなりながら固まってしまっていたし。


「まあ、あながち間違ってないかもね」

「蛍?」


持っていた雑誌を閉じて、私の横に座るなりわしゃわしゃと頭を撫でられる。
だけどその手つきは優しくて心地の良いものだ。自然と頬を緩ませていると、蛍がポツリと呟く。


「それ菅原さんに言われたって事は、他の奴もそう思ってるって事だよね」

「ん?」

「ムカつく」


いや、私にそんなこと言われても。
なんて思った時には、視界いっぱいに不機嫌そうな蛍の顔と奥に天井が映っていた。
だけどすぐに一転して柔らかい表情になる。


「確かその花、夜にしか咲かないんだよね」

「確か、そうだったはず」

「じゃあさ、僕しか知らない顔があっても当たり前だよね」


それってどういう意味。
そう聞こうとしたのだが、意味を持つ前に音となって蛍に飲み込まれた。




_____

ツッキーとは年相応な恋愛できそうだよね。
でも彼女のタイプによって、対応変わりそう。
デレデレに甘やかしたり、ツンデレ全開にしたり、いつも通りだったり。
どっち道、凄く好いてくれることに変わりはないだろうけど。
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