「ホント情けないったらないよー」
「えー彼氏いるだけいいじゃん」
「そうだよー私も彼氏ほしいなぁ」
目の前で女子トークに花を咲かせている友達の声をBGMに、私は一人思考を巡らせていた。
彼氏、ね。
背が高くて、かっこよくて、彼女思いで……。
なんて、どこでもよく聞くようなワードが連なっていく。
夢見がち、理想が高い。
でも、女の子はそう言うのに憧れるものだから仕方ないと思う。
「ナマエは?」
「んー?」
「彼氏にしたいタイプ!」
その言葉に、私はチラリと視線を逸らした。
視線の先には、クラスメイトと楽し気に話している人の姿があった。
背は私よりは大きいけど、男としては小さい方だし童顔。
だけど小さな体に見合わないくらいでっかい心の持ち主。
一体どこから来るんだろうって言うくらいのそれに、何時も驚かされてばかりだ。
「好きな事に一生懸命な人、かな」
視線を戻しつつ、そう答えると三人して「えー」と不満そうな顔をする。
「なに、悪い?」
「いや悪くはないんだけど、ほら、外見とかは?」
「平均かそれ以上なら気にしない」
「カッコいい方が良くない?」
「中身がカッコよかったら二割増しに見えるから平気」
「そうかなぁ」
なんて口々に首をかしげるが、一人の子が「あ!」と声を上げた。
「何々、ナマエもしかして好きな人いるの!?」
「え、嘘!」
「でもナマエバレー部のマネージャーだし」
「ああ! カッコいい人多いよねぇバレー部」
私が口を挟まずともどんどん話が盛り上がっていく、結局私の好きな人は男子バレー部の中に居るという結論になったらしい。
間違いでないから困る、私はため息をついて億劫な気持ちを誤魔化した。
「で、どうなの?」
「さあ?」
「もー教えてくれてもいいじゃん!」
教えるのはいいけれど、ここは教室だし三人ともキャーキャー声あげちゃうだろうし。
考えてはみたが、今言うという選択肢はなかった。
「じゃあヒント! ヒント頂戴!」
「いる前提じゃんそれ」
「じゃあいないの?」
「まあ、いるけど……」
その返事に「やっぱりー!」と顔を見合わせて笑う彼女達は、凄く楽しそうな表情だ。
恋バナというやつはそこまで彼女達の中では有意義な議題らしい。
「ねぇねぇヒントは?」
「キラキラした人」
「抽象的すぎるよ! もっと具体的なの」
「……大きい人」
「ヒントの意味ない! バレー部高身長の人多いじゃん!」
「いや、身長じゃなくてさ」
「えぇ?」
どう言う事だと首を傾げたり眉を顰めたり。
でも私は間違った事はいってない。
行動も言動も、声量も心も、普通の人より何倍も大きい。
それを知ってる人はそこに憧れたり惹かれたりするんだ。
「ナマエはその人に告白したりしてないの?」
「言うとしても彼の最後の春高後だろうね」
「それってすっごい後じゃん!」
「それでいいの?」
「バレーに真っ直ぐでキラキラしてる彼が好きだから、いいの」
彼は潔子さんが好きなんだろうなって思う。
潔子さんは美人さんなだけじゃなくて頑張り屋さんで、今風に言うなら女子力も十二分にある。
そんな彼女に惚れてしまっているなら仕方ないと思う。
今はバレーをしている時のキラキラした笑顔が見れればそれでいいかな。
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恋に恬淡な子のイメージ(無自覚奥手)
変に遠慮して誤解して、理由をつけて逃げてる。
だからこそ眩しい位カッコいい彼に惹かれる部分があるんだろうなぁ。
なんて、思います。
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