みんながどこかで戦っている。
どこかに、雲雀さんがいる。
行かなくちゃ。さっきまでならそう思えたのに、今はもうだめだ。
自分が無力すぎることが悲しくて、泣くのにも疲れて、みちるはただただ地面に身体を寝かせていた。
空腹で力が入らず、ましてや死にたいとまで考えた後なのだ。

みちるはもう、動けなかった。



「そうだ、大変なんだ…千崎さんが…!」

ランチアと戦った後、ツナは青い顔でそう叫んだ。
獄寺とビアンキは大きく動揺し、ツナを振り返った。

「どうしたのツナ?みちるがなに?」
「千崎さん、ここに…ここに来てるって…!」
「なっ…!!」

疑問はまだたくさんあった。
だが獄寺は、そのうちのひとつも口に出すことができないでいた。
確かに最近、みちるは学校に来ていなかった。
だが、並中生の襲撃が始まってからは欠席者が多かったし、それほど気に留めていなかったのだ。

しかし、その間獄寺は、多少なりともみちるを気にしていた節があったのは確かだ。
夏休みの最後に、ケンカ別れのような気まずい別れ方をしてしまってせいで。
あれから一週間以上も話さずにいて、どうして平気でいられたのか。
みちるに、自分がイタリアに行くかもしれないと言ったことを引き止めてもらえなかったことを、未だに悔しいなどと思っているのか。

…ふざけんなよ。そんな、女々しいことあるか。

そう言い聞かせても、獄寺の動悸の激しさは一向に治まる様子がなかった。

「獄寺くん?どうかした?」
「…あ、いや…」

打倒骸、と覚悟を決めているときに、落ち着きのなくなった獄寺を見かねたツナがそう声をかけた。

「……オレ、その、千崎に…」
「?うん」
「言わなくちゃなんねーことが…あるっつぅか…」

そうだ、このままではいけないことは、ちゃんと前からわかっていたのだ。
みちるは「自分を信じればいい」と言っただけだ。
勝手に女々しく悔しがっていたのは自分だ。
みちるに必要とされたかっただけ、…それを認めるのが、恥ずかしかっただけ。

獄寺の思いは、今となってはシンプルだった。
みちるの姿がいざ見えなくなった、今となっては。

「…オレ、最低です」
「え?」
「なんで、いなくなってから気付くんでしょう…」

獄寺のその呟きを聞いたツナは、小さく「オレもだよ」と言った。

「守らなくちゃいけないときに、いつも千崎さんはいないんだ」
「10…代目…」
「それで守れなくて後悔して…また千崎さんを泣かせちゃうんだよね…」

「みちるはただの泣き虫だ。気にすんな」

バーズの鳥を目で追いながら、リボーンはぴしゃりと言い放った。

「り、リボーン…」
「あいつが泣いたら、その涙を拭いてやれ。それでいいんだ」

ツナと獄寺は、一瞬視線を合わせると、小さく頷いた。
思うことは、同じだ。


「…千崎に、会いに行きましょう、10代目」
「うん…。きっと、泣いてるからね」
「あいつ、泣き虫っすからね」
「そうだね。だから、早く行ってあげなくちゃ!」

だから待っていて。
無理しないでいいよ。
ひとりでいるなら、怖いよね。


ひとりで泣くのは、つらいでしょ?

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