Prolorue
悪いのは私ではない。言い訳がましいかもしれないが、誰に何を言われたとしてもこれだけははっきりとしている。

運動嫌いで滅多に運動なんてしない筈の二つ年下の弟が全身筋肉痛になって帰ってきた辺りから、何処かおかしさは感じていたのだけれど、まあそれも男の子だからと私は口を噤んだ。運動をするようになるのは良いことだと思うし、家でゴロゴロしてばかりいるよりはずっと健康的だから。

でも、明らかに殴られたような痕をつけてきた日は流石に口を挟んだ。どうしたのか、いじめられているのか、と。私の弟はそれはそれは非力で弱虫な、所謂いじめられっ子だったから遂にそうなってしまったのかと考えたのだ。しかし、弟は違うと言った。友達と少し喧嘩をしただけだ、と。私はそれを信じた。たった一人の姉弟だ、たとえ疑問を抱こうが信じない方がおかしいだろう。

けれどそれから弟は、随分と変わってしまった。ぱんつ一枚で町を走るだとか、そういう根も葉もない下らない噂だと思っていたものも本当のことだったし、学校をサボって友人と遊びに行ったこともあった。

弟は、おかしくなってしまったのだ。

見知らぬ子供を何人も居候させている。学業を疎かにしている。夜中に家を抜け出している。大怪我をしても何も言わない。
弟だけじゃない、町の病院もおかしい。治療費の掛からない病院なんてある筈がないのに、あれだけの大怪我を治療してもらった筈なのに、それなのに我が家に明細はこなかった。
弟の友人だっておかしい。未成年者の喫煙が違法であるなんてそんなことはどうでもいい、肺を汚して死んでいくのは本人だ。そんなことじゃない、もっと根本的な本質的なことだ。どうして彼らは、弟がマフィアのボスになることを知っていて交友関係をもっているのか。


「お前、知っていたのか…?」

ええ、勿論。弟が知らないことも、守護者達が知らないことも、全て知っていた。なんなら貴方が知らないことも知っているのかもしれないわね。

「どうして言わなかった!そうすればあいつは」

そうすればあいつはどうしたのかしら。泣きついてきた、とでも言うつもり?女に泣きつくほど未来のドン・ボンゴレは情けないの?ああ、そうね惨めで哀れな弟ですものね、甘ったれなのも仕方がないわ。

「違う!お前をもっと守ってやれた!」

もしかして貴方は未来でのことを言っているのかしら。私が、ボンゴレへの見せしめとしてミルフィオーレにされたことを言っているのかしら。それならお門違いよ。あれは誰にもどうすることも出来なかった。白蘭だってあれは事故だったと言っていたわ、そういうものなの。恨みもないわ。それに、貴方たちが悔いるべきは別のことよ。

「どうしてだ、どうしてお前は」

愛人が沢山いる素敵なプレイボーイの台詞とは思えない言葉ね。どうして、とはどういうことかしら。私が全てを知っていたこと?弟につらく当たったこと?それとも、私がここにいること?

「全てだ!そもそもどうしてそんな所に!」

ここは私の楽園よ。追放されたイブは地に落ちるしかないの、つまりはそういうことよ。私はもう戻らない。私を追い出したのは貴方たちだけれど、出ていったのは私の意思よ勘違いしないで。

「貴方たちが好きなのは、気にかけているのは、いつだって私ではなく綱吉でしょう?私の勉強の邪魔をしたって、受験生の私に子供の面倒をみさせたって、気にかからない私のことよね。興味もなかったのかしら。…冗談じゃないわ、貴方たちのせいで私の人生はめちゃくちゃになったのよ。どうしてくれるのかしら、どう責任とってくれるのかしら。なんならその世界最強とかいう崇高な命で償ってくれても構わないのよ。動かない的を射抜くことくらないなら、非力な私にだって出来る筈だから」

重ねて言おう。
悪いのは私ではない。言い訳がましいかもしれないが、何を言われてもこれだけははっきりと言える。これは・・・


全てあいつらのせいなんだ
(だから私は悪くない)




←top


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -