昼休み、鴨が葱を背負ってきた




厳密に言うと、沢田綱吉がアルコバレーノを抱っこしてきた。後ろには野郎が二人。多分きっと間違いなく守護者Aと守護者Bだろうと思う。黒髪と銀髪。どちらがAでどちらがBなのかについては置いておくとして


「あの、ななしななしくんだよね」
「そーやで、はじめまして。おたくは?」
「沢田綱吉っていうんだ。よろしく」
「よろしゅう。そっちの三人は?」


ああやだやだ野郎臭くて敵わない。鴨を鴨鍋にしやすくなったのは幸いだが、アルコバレーノもスモーキンボムも、とっ捕まえて喰らってやろうみたいなそんな面をしている。警戒心は充分。ぼけっとしていると俺が鴨鍋になりそうなくらい。けれど、彼が未来ある偉大なボンゴレ十代目であることを考えるとなんだこれっぽっちかとも呆れた。侮っている訳では無いけれど、だが然し



「おう!俺はや」
「オメー、マフィアじゃねえだろうな?」


瞬きを一つ
黒髪の少年の自己紹介を遮ってまで吠え立てたスモーキンボムの方を向く。カマ掛けにしては随分と杜撰な質問だ。指先の一つも跳ねやしない
才に恵まれいずれは素晴らしい殺し屋になるだろうと言われていた本場イタリアのマフィア見習いが、こんなに躾のなっていないわんちゃんだったとは露知らず


「えーと、マフィアっちゅうんはよう分からんけど……おたくどちらさん?」


呆気に取られて苦笑したフリ。嘘の中に真実を混ぜるのは常套手段であるが、なんなら本心からのものなのだから笑わせる。流石に世界最高峰と呼び名の高い赤ん坊を舐めてかかるわけにはいかないが、獣畜生ならばと思ってしまうのはそれすらも作戦なのか。それとも


「やめてよ獄寺くん!」
「ですが十代目」


慌てたような鴨と、噛み付きたくてうずうずしている狗のコントに微笑ましさすら感じる


「なんやあ?君らはマフィアなん?」