「大阪から越してきましたななしななしです」
掴みは上々。良い塩梅でザワつく女の子らの合間に視線を流して、嫌味じゃない程度に状況を把握していく。写真で見た「沢田綱吉」は、ボケた偶像と変わらずそこに居た
「並盛には親の都合で先週来てん。やから全然町のことも知らんし、良かったら皆色々教えたってなあ」
席は一番後の窓際。調和を乱す凸として、一つの異分子的な空席がそこにある。黒板に、少し歪な俺の名前を書いていた担任の教師が、とりあえずとして腰を下ろすように伝えてきた
放課後になると、事務手続きが待っている。「両親の転勤と離婚に伴って、一足先に俺一人だけが越してきた」今の状況を学校側は知っているので、細々とした書類が残っていたからだ。つまり動けるのは放課後までの僅か、半日のこと
ボスはあまり急がなくてもいい慎重さをと言ってくれていたけれど、転校初日こそ勝負だろう。大っぴらに、多くを調べるには人懐っこい性格の転校生という立場は酷く美味しかった
「皆、よろしゅうね」