自分は多分、他の奴等とは少し違うんだと生まれてすぐに気がついたのだと思う。生まれ育った場所がどうとか、そんな馬鹿げたはなしはしないけど、確かに藤麓介という人間は(人間かどうかもあやふやなのだけど)存在はするものの中身が脱け殻だと言えば、誰か真剣にはなしを聞いてくれるのか。どうせお前たちは、あどけない表情で笑うんだろ。それなら俺は黙ってるよ。(そうだ、一言でまとめたら俺は他の人間よりオトナなんだ)

「せんせ、ベッド借りるから」
入学してまだ一週間も経っていない。だけど俺はもう保健室の常連で、隙を見てはここにきている。
「あら、藤くん。いらっしゃい。今日も体調がわるいの?」
ふふ、と笑みを含みながら、知らないような口をきく沙織先生が実は少し苦手だ。快くベッドを貸してくれるけど、俺が仮病ってことぐらい当たり前に分かっている。見透かすように笑うこの女が苦手だから、あまり保健室はすきじゃない。ただベッドがあってクソかったるい授業から逃げれるなら、こんな虫酸がはしるような思いぐらいしてやろーじゃねえか。
そう、俺はオトナなんだ。他の奴等よりずっと。
サボることだって知っているし、どうしたらテストでいい点を取れるのかも分かる。顔をみればだいたいの気持ちは読みとれるし、状況把握と観察することは得意なんだ。コーヒーも飲めるし、身長だって低くない。それだけじゃないけど、でも、俺はオトナなんだって譫言のように言っていられるよ。俺は気づいていない、自分が如何にコドモなのか。だれも気付かせてなどくれないから。だれも、俺の心に入ってこれないから。

背伸びをしているだけ

(105)


…………………………………………
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -