納得がいかない。それより、不安で仕方ない。嫌だ、こんなの。大人ってセコイ。あんなん言われたら、黙っちまうの分かっててそんな言葉を選ぶ。(それに眼差しが真剣だったから、何もいえなかった)
ああ、どうしよう。こいつまで目の色変わってしまったら。保健室が居心地の悪い場所になってしまったら。そんなことを思いながらひたすらに寝たふりを続けた。

しばらくしてガラリと保健室のドアが開き、親父の声がした。
「こんにちは、藤 麓介の父です。この度はお世話をかけてしまい…」
倩と物事を話す父の声に苛立ちを覚えながらうっすらと目を開ける。派出須の目は相変わらず凛としていた。なにも変わらず、父をしっかりと見ながら話ていた。

いままでの先生だったらどうだろう。まずはひくか媚びるかだった。次の日からは俺に接する態度が変わって、等々俺にまで媚びる始末。そんなのが嫌で仕方なくて、頼りたくなかった。俺に媚びる派出須など見たくない一心で必死だった。でも、よく考えたらわかることだったのに。コイツがおかしくなるわけないのに。
「藤くん、お迎えきたよ」
あれ。なんだこれ
「立てるね?」
じわりと、むねがあつい
目の前には綺麗な顔で微笑むだけの先生がいた。父の風貌をみても家柄を知っても彼はそのままだった。心が広いのか関心がないのかどちらでもいい、その反応が嬉しくて泣きそうになっていた。
「ああ、大丈夫だ」

すこしだけ、派出須のことを見る目が変わった気がする。すこしだけあいつに興味をもっている自分がいる。ただ、この胸が跳ねるような思いがどんな感情なのか、名前をつけることはできずにいた。


変化

(105)


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