九連宝燈
皇毅、陵容、凰晄、そして玉蓮が牌が撒かれる卓子についた。
その哀れな姿を侍女達が心配そうに遠巻きから眺めていた。
「あぁ、姫様……なんて面子なのお可哀想に!思い余って牡丹台から池に飛び込んだらどうしよう」
「いいえ、姫様は見た目と違ってかなり図太いわ!もし池に飛び込んでも自分で泳いで上がっていらっしゃるに違いないから大丈夫よ、信じましょう」
下で勝手な事を話している侍女達が見守る中、楽しい話をするでもなく黙々と麻雀牌が積まれてゆく。
淡々と局が進む中、寂しさから銀の指輪を御守りのように眺める玉蓮がのろのろと牌を捨てると、陵容の声が上がった。
「栄和!清一色、一気通貫!倍満」
玉蓮は早すぎる栄和に驚くが更に両隣の皇毅、凰晄の形相がかなり怖かった。
物凄く悔しそうに眉間に皺を刻む皇毅は玉蓮の事がなければ自ら勝負に出るに違いなかったが、今宵はこの場違い娘々が主役なのだ。
玉蓮は一人寂しそうに肩を落として点棒を失ってゆく。
その横で無表情で牌をきる皇毅と凰晄は続々と玉蓮の膝にすり替える牌を投げた。
二人は諦めてなどいない。
流されるままの成り行きとはいえ、もう引き返す事は出来ないのだ。
葵家の嫁と認められる為、何としても九連宝燈を完成させねばならない。
玉蓮は必死ですり替える牌を指に引っ掛けて配牌に手を伸ばした。
「待て!!」
叱責の声と共に、陵容に玉蓮の手はきつく掴まれた。
余りの事に玉蓮は固まり何も言えない。
掴まれたのば指輪をしているその手だった。
イカサマが見抜かれた。
「……手の中を見せて頂きたい。手持ちは十三枚、もしその手の中に牌があれば十四枚になるが」
−−−−終わった
−−−−早かった……
流石の皇毅と凰晄も諦念し瞑目した。
「どうした。早くその妙な指輪をした手を開いてみろ」
「叔母様が……何故、そのような事を仰るのか分かりません……手を離してくださいませ」
涙目で懇願する玉蓮だが陵容は決して掴んだ腕を離さなかった。
「手を開けぬ娘々に叔母呼ばわりされる筋合いはない。無論、手持ちが十四枚のイカサマ娘など論外だ」
嵌められた
叔母は端から玉蓮を気に入ってなどいなかった。
どこまで素性を調べているのか定かではないが、葵家の嫁と認めてなどいないのだろう。
[*prev] [next#][戻る]