明ける昊へ向かう


皇毅は愛する玉蓮をこのまま可愛がってやりたい欲にかられるが、今はそれは叶わなかった。

「話の途中で脱線したが、元凶は情報を漏洩させた御史である事は明白だろう」

そう結論を締めにかかる。
しかし玉蓮はその結論にはあまり納得出来なかった。

「でも、最初の発端はやっぱり私です……」

「そんな綺麗事言って自分に酔っている場合か、とにかく今から漏洩させた御史の状況を把握し戸籍を握っているもう一人が探りを入れる前に先手を打つぞ」

「………」

他に良い代案を立てる事が出来ないのならば、自分が皇毅を責める事をしてはいけない。
それに、皇毅が追い落とされて欲しくない上に自分もまた離れたくないという我が儘を通してもらうならば尚更だった。

「それしかないのならば……お願いします。私にもお役に立てる事は申し付けてくださいませ」

優しい手つきで玉蓮の頬を撫でながら皇毅はふと洩らす。

「同じ女でも竹割ったような紅秀麗と違ってお前は柳の様な順応さだな。よっぽど使える」

そう玉蓮の知る女と比べて褒めた、つもりだった。
しかし玉蓮は困った顔をする。

「皇毅様の周りには、素敵な方が多すぎますね……」

「何………?」


誰が−−−素敵な方だと?



絶句する皇毅に「申し訳ありません、お忘れください」と玉蓮は慌てて頭を下げた。

迂闊な発言だったのかもしれないが、いや有り得ない。
よもや紅秀麗まで心配事になる等とは考えもつかなかった。
いや、冗談じゃない。

(あの生意気なチンクシャ娘まで入るわけないだろう……!)

即行否定してやりたいが、言葉を選ばねば話を蒸し返して不信感が増すだけ。
女の色恋事はそういう面倒臭い思考の上に成り立っていることは承知していた。

「……紅秀麗は王の官吏であり、また王の女だった。あの女を縛る事が出来るのは私ではない」

そう他人事の様に言って様子を伺ってみれば、玉蓮は納得したかのように過ぎたる日を思いだしていた。

「主上は、やはり今でも秀麗様を想って下さっているのですね……良かった」

「知らん。しかし言える事は王の官吏と王の女は両立出来ない。それを決めるのもまたあの二人だろうな」

愛する女を万人の利益の為に傍に置かずに愛し続けているとしたら、それは一定の評価が出来た。
しかし皇毅はそれすら利己的な思惑があるようにしか見てとれないと切り捨てている。

評価出来るかは今後の王の判断次第といった所だった。




[ 59/76 ]

[*prev] [next#]
[戻る]
<br />



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -