何度でも逢いに


「私の管轄する部署は各々独自に動く事が多い。また、何からの意図があり戸籍抹消したと解釈するのが普通だ」

「それが、普通なのですか」

(秀麗様はとんでもない部署に派遣されてしまったのかも)

余りの事に思考が自分から遠ざかる。
秀麗もある日突然に戸籍が無くなっていたらどうしよう。
否、紅家の姫である秀麗がそんな適当に扱われる筈はないから大丈夫。
そんな事をぐるぐる考えていると、皇毅に上の空な顔するなとばかりに顎を掬われる。

「お前の処分に関わった御史は二人いる。一人は戸籍抹消のみを担当した者と、もう一人はお前を妓楼に送る手筈を担当した者だ。二人は別々に極秘任務を担当したのだから任務が入り混じる事は決してない筈だった」

「は、はい……」

「ところが何故だか、戸籍抹消を担当した御史がお前を探して妓楼に現れた。おかしいだろう?」

皇毅の問いかけに、玉蓮はパチパチと瞬きをして暫し考えてみた。

「私を妓楼に送った御史様が極秘事項を喋っちゃったんじゃないでしょうか。それが偶々戸籍抹消を担当した御史様だった……とか」

「………」

皇毅は「察しがいいな」と誉める気にもならない。
極秘事項を喋っちゃった、という行を改めて聞いて御史台の総取り締まりとしての苛立ちを通り越して頭真っ白になりたい気分だった。

通常のならば「規定通り」血祭りに上げてやりたいが、今回ばかりはそうもいかない。
極秘のまま処理する必要があった。

「そう、お前の言う残念な偶然が重なり、喋っちゃった御史と妓楼に現れた御史が更にお互いの情報を交換すれば、自ずと私が一人の罪人を匿った事が露呈するだろう」

「こ、皇毅様は私をお救いして下さっただけではないですか!」

「世間的にはそうだとしても、法規的には御史台長官による職権濫用を伴う拉致罪とでも銘打って立件出来る。陸清雅が控訴担当御史となり御史大獄でも興されれば」

追い落とされるだろう。
清雅はやるとなれば確実な証拠を揃えて来るだろうし、玉蓮の戸籍謄本もまだ破棄せず握っているかもしれない。
そして何より一番の証拠は−−−

「お前まで証拠人として大獄に引きずり出されれば大迷惑だろう?」

「……私が、一番の動かぬ証拠という事ですよね。私さえ捕縛されなければ、決定的な証拠が欠けます」

「………」

なんで、こんな事ばかり察しがいいのだろうか。
彼女が妙な事を言い出すのではと嫌な予感がした。




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