何度でも逢いに


皇毅は少しだけ開けていた窓をそっと閉め、暗がりの軒の中で玉蓮への愛撫を続けていた。

今まで抱き寄せると必ず固くしていた身体は皇毅を受け入れた為か弛緩しきって柔らかく温かい。

何でこんなに柔らかいんだと思いつつその身体の柔らかさに酔いしれそうだった。

すると、ふと玉蓮が合わせていた唇を外す。

「どうした」

「あ、あの……皇毅様は苦しく、ならないのですか?」

はぁはぁ、と忙しく息を洩らしながら不思議そうに訊いてくる。
どうやら口づけしている間呼吸を止めていたようだ。

「息を止めていたのか……息継ぎくらいしろ、窒息するぞ」

何にも知らないのだな、と言われしゅんとするが皇毅は咎めている割には何故か機嫌は良さそうで不思議になる。

独占したい男心を察する鋭さはなく、髪を梳く仕草に移る皇毅にそのまま甘えていた。

「皇毅様……私もです」

何がだ、と優しく問いかけられ顔を皇毅の胸に埋める。

「私も、愛して、……おります」

一拍程髪を梳く手が止まったが、直ぐにまた再開される。

言ってしまった、未熟な感情のまま大胆な事を言ってしまったと真っ赤になって顔を隠す姿をいつまでも見ていたかったが、皇毅はゆっくりと玉蓮を起こした。

「お前には話しておかなければならないな」

その言葉に玉蓮は不安そうに瞬きを繰り返すが、話して欲しいと頷けば皇毅もようやく事の顛末を話し出した。

「流刑になる筈だったお前を私が勝手に拐って来たのは法規的にはイケナイ事だ。それは分かるな」

「は……はい」

玉蓮は妓楼に売られた事が流刑に値する罰なのだと勝手に解釈していたが、よくよく考えれば流刑地と妓楼は全く違う。
妓楼も自由を拘束されてはいるが別に罪人がいる場所ではない。

「なのでお前の戸籍を罪人の家からこっそり抹消して拐って来たわけだ」

「えっ抹消!?」

身分を剥奪されたとは聞いていたが、戸籍すら無くなっているとは驚きだった。

「残念だったな、実は今のお前には戸籍がない。そして、それもしてはイケナイ事だ」

聞けば聞くほどイケナイ事だらけではないか。

「そ、そんな事をして皇毅様は咎められないのですか?」

案の定、心配そうに訊いてくるが「そんな裏工作は日常茶飯事だ」とも言えなかったし、決定的に日常と違うことが一つある。
それはこの違反が皇毅の私的目的の為だけに行われた行為であることが問題だった。




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