誤算


朝陽がしっかりと顔を出した頃、皇毅の室に徹夜明けの秀麗と裏行の蘇芳が徹夜仕事の成果を報告しに現れた。

「葵長官、調書が上がりましたのでよろしくお願いします。そして自分は本日公休日ですのでこれにて失礼致します!」

秀麗は次の雑務を命じられる前に自ら失礼しますと宣言する。横の蘇芳は「お嬢さん、また長官逆撫でちゃうからヤメテー」という苦蟲噛み潰した様な顔をしている。

皇毅は渡された調書に目を通し口を開いた。

「ご苦労だった、帰ってトドの様に寝てろ」

「えっ!」

秀麗はあんぐりと口を開いて、厭味の一つもなく帰宅の許可を出す皇毅を物珍しそうに見た。最早「トドの様に」という行は厭味のうちに入っていない。

「なんだ、ありがたい上司愛に感動したか?分かったから気が変わる前にとっとと退出しろ」

皇毅にとって本日秀麗が公休日である事は好都合だった。

「そうだ、一つお前に言っておく事がある。あの医女官は本日付けで地方に派遣される事になった」

「えっ!あの美人さんが!?」

今度は蘇芳が真っ先に反応する。徹夜明けにトドメを刺されましたという表情でガクッと肩を落とす。
秀麗も納得いかない表情だ。

「本当ですか!?私何にも聞いてないです!玉蓮さんが目障りだから長官が遷ばしちゃうんじゃないですか!?」

「……減らず口だけは毎度ご立派だな、これは本人の希望だ。地方の平民医倉で修練したいそうだ。文句でもあるのか?お前のフンしてるよりよっぽど有意義だと思うが」

「うっ……それは確かに」

確かに自分一人を診ているより、困っている民の為に頑張って貰った方が秀麗としても嬉しい。

「じゃあお別れの挨拶しにいかないと!そうだ、お弁当とか作ってあげたいわね」

「その必要はない。昨晩既に発っている」

「はぁ?」

それならどうして昨晩教えてくれないのかとムカっ腹が立ったが皇毅にそんな親切求めても無駄な上に後の祭りだった。

「長官のありがたい上司愛には毎回涙がちょちょぎれます……」

「そうか、恩に報いてキリキリ働け」

秀麗達をシッシッと追い払い、腕を組んで鋭い双眸を閉められた扉に向ける。
秀麗が今日行われる事を知れば必ず勝手に調べ出すに違いない。
そして調べられては都合が悪い。このまま、地方に派遣されたという事で納得させて後始末は−−−。

(やはり清雅か……)




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