終わらぬ夢


「はぁ、ん………」

「どうして欲しい」

情事に消極的な玉蓮にも言わせたい。
動いて好くして欲しいと、躯だけでなく言葉で言わせてみたかった。

「皇毅様でなければ、こんなこと嫌です。でも、皇毅様がしてくださるならば……気持ちよくて、好き…」

それは光栄だと耳許で囁く。
一番欲しい言葉を貰い心が満たされた。
今夜だけでなくずっと独占していたいのは最早同じ。

心が満たされあとは愛欲を満たすだけだと合わせていた腰を動かし出すと、膨張する陰茎を絡みとる密が花弁から漏れ出す。

その様子を目で愉しみながら水音を立てていると玉蓮が腕を伸ばしてきた。

達しそうで何かに縋りつきたい仕草だとわかり身体を寄せ、耳朶を愛撫しながら腰の律動を弱めず官能の頂へと導いてやる。

同時に達してしまいそうだが、それもいいと考えながら耳許で睦言を囁き続ける。

しかし甘く優しい言葉を囁きながらも、頭の中では別の事を考えていた。

無駄に流れてしまった夜の分もやりたい……


それは言わない方が良さそうだった。




−−−−−−−


−−−−−−−−−−−



朝靄がかかる窓の外を眺めていた玉蓮が身を起こす。

先ほど皇毅の出仕準備を手伝い送り出した所だが、まだ休んでいろと言われて横になっていた。

けれど、

「呑気に寝てられるわけないじゃない!」

この後一体どうすればいいのだ。
夜着をはだけて自分の身体を見てみると複数の紅い華が咲いている。
皇毅が口づけた際、痕をつけたのだろう。

立ち上がれば太股に愛欲が流れ落ちてくる。
寝台も乱れきっている。

この状況で何事もなかった昨日と同じような振りして室から出て行く事など出来るのだろうか。
全然様子が違うではないか。

「どうしよう、皇毅様の妻に返り咲きましたなんて私が言っても信じて貰えないし」

後先を考えずに夜伽をしてしまった。
しかしこの室と自分の身体をなんとかして、何食わぬ顔で出て行くしかない。

皇毅が妻にすると凰晄に諭してくれるまで、葵家当主をたぶらかす女狐扱いされないように隠さねば。

玉蓮は猛然と立ち上がり夜着の袂をきちんと整えて寝台の敷布を丸め出す。
ぐるぐる巻きにして情事の痕跡を隠すと洗濯物を出す振りをして出て行こうと決めた。

すると急に寝殿の扉がバタン、と開き家令の凰晄が猛然とした勢いで入ってきた。
布団を丸めていた玉蓮はそのまま固まる。

「凰晄様……お、おはようございます…」

「当主から全て伺いました」

家令はいつもに増して無表情だった。





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