再会


「私……待っていたんです。でも、来てくださらなかったから……自分で会いに来ました。御史台が調べている事を追えば、会えると思って」

箝口令まで布かれている葵邸の門を叩いても開くはずはない。
だからこうして、御史台が追うものを持って会いに来た。

「お前がしゃしゃり出て来ている報告は受けていた。どうせ縹家の丸薬をくすねて持っているだろう。さっさと出せ」

大きな手が目の前に差し出されたが、それは玉蓮を迎える為に差し出されたのではなく、丸薬を渡せと言われているだけだった。

「これ、きっと縹家が作ったものなんかじゃありません」

玉蓮は袂から二粒の丸薬を取り出し掌に乗せて突きつけた。

「不老不死などあり得ません。縹家にそんな力があれば飛燕姫様はお亡くなりにはならなかったでしょう。もし、縹家に不老不死の秘法があるとするならば、それは命の対価になる恐ろしいものです」

飛燕姫

臆することなくその名を口にすると皇毅の眉が苦々しく歪んだ。

「お前に命の対価が分かるのか」

「命の対価は、同じく命そのものでしかあり得ません。命を長らえる為に他の命を物として食らうように、不老不死となるには命をその身へ奪いとらねば叶わないでしょう」

玉蓮は縹家の大巫女が本当に他人の命で不老不死を得ているなど想像してはいなかった。
けれど、もし方法があるならばそれくらいの恐ろしい方法しかないのだと確信していた。

人は死から逃れられないと、医女として命に向き合い目の当たりにし続けてきた。

だから、こんな丸薬……今すぐにでもどぶの中に投げ捨ててやりたいくらいだ。

「この丸薬、何で出来ているのか分かりますか?私、さっきひとかじりしてみて、この丸薬の正体が分かりました」

見れば確かに二個ある丸薬の一つが半分かじられている。
邸一件建つほどの高価な丸薬だが、得体のしれないものを平気でかじる玉蓮に皇毅は少し呆れた。
相変わらず無鉄砲にもほどがあるが、掌に乗る二つの丸薬のうち、かじられて半分になった方を皇毅はつまみ上げポイ、と口に放り込んだ。

「あぁ!皇毅様、それ証拠品なのに!」

「自分の事を棚に上げて何を言っている。それにこの丸薬の中身を訊いてきたのはお前だ。『もとから一個しかありませんでした』で済ませばいいだろう」

当たり前のような口振りで吐き捨てた上にギロリ、と睨まれた。

丸薬は一個しかありませんでしたで、もみ消すつもりな皇毅は無表情で咀嚼し確かめるように瞑目する。
そして成分が分かると再び眸を開けた。

「この丸薬の大方の成分は『硫黄と水銀』だ」

「その通りです」

玉蓮はコクリ、と頷く。
その深刻な面もちに皇毅は鼻で嗤った。

「世に出回る貴重な丸薬には水銀が含まれている。特別なものでもあるまい」

「水銀を食してはなりません!」

玉蓮は大声を張り上げた。





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