「シン!」 「……また、君か!?」 少女は目ざとく意中の男を見つけると、すばやく駆け寄っていった。一方、男の方は少女を目に留めた途端にあからさまに嫌な顔をする。 「君じゃなくて名前で呼んでって言ってるじゃない!」 「はーーー……」 怒る少女に男はわざと大きなため息をついてみせた。すると、それを目にした少女の頬が見る見るうちに膨らんでいく。 「なによーー……!」 「君が困っている俺に協力してくれたことは感謝しているが……」 「シン!」 男は少女に何かを言いかけたが、それは二人の背後からやってきた者によってかき消された。 「こんなところにいたのですか。さあ、ここにもう用はないのですから帰りますよ」 「……え!?」 その背後からやってきた男は、シンと呼ばれた男から視線を逸らして、その隣で目を見開いている少女に目を留めた。 「いままであなたには本当にお世話になりました。そのお礼にこの男の本当の正体をお教えしましょう」 「ジャーファル!」 ジャーファルはいくらか冷めた目で少女を見つめる。 「この男は実はシンドリア国の王シンドバッドなのです。ですので、どうかこの男のことはお忘れ下さい」 少女はその男の言葉に一瞬目を見開くが、すぐに平然とした顔をして一言言い放った。 「そんなこと知ってるに決まってるじゃないの」 これに驚いたのは男二人である。さっきの少女よりも驚愕している彼らに少女は笑ってみせた。 「私、情報を得るのだけは早いの」 「・・・・・・ですが、それなら話は早いですね。そういうことですからシンのことは諦めてくれますね?」 少女は思わず黙り込む。そんな少女に背を向ける二人の男。しかし、少女は二人にキッと鋭い視線を送るとこう言い放った。 「見てなさい"七海の覇王"シンドバッド!必ず王宮まで追い掛けてやるわよ!私は絶対に諦めないんだから!」 はいはい、とそんな少女のことばを流しながら、男は去っていった。 しかしその二年後、二人の男は再び驚きに目を見開くことになる・・・・・・ (この度、ジャーファル様のお側で働かせて頂くことになった名前と申します!) ((マジで来た!?)) ← |