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(いきなり一目惚れされた女の子のお話)


「結婚しよう」
「は?」


待て待てちょっと待って。目の前の男は一体何をほざいているの?


私は驚愕しながら彼の瞳を食い入るように見つめた。男はただひたすらに笑顔を浮かべている。今日市場をぶらぶらしているところに彼と偶然出くわしてみれば、冒頭にある言葉を平然と言われた。


「だから結婚しよう!」


「いやいやおかしいでしょ、それ」


そもそも目の前で戯れ事をぬかしているこの男は、昨日が初対面だったはずである。それなのに、一体何がどうしたら結婚しようなどの言葉が出てくるのだろう。不思議だ。というか何もかもがおかしい。


「ふざけるのも大概にしてくださいよ。訴えますよ」
「ふざけてなどいない!俺は君に一目惚れしたんだ!」


一目惚れしたのはよいが、結婚に至るまでにはそれなりに過程が大事なのだということを教えてやろうか。そもそも彼と私とでは身分が違い過ぎる。それについて指摘してみたところ、返ってきた言葉は、


「問題ない!」


の一言。いや、おかしいでしょ。普通はそこらへんで一悶着起こるでしょ。それで二人は泣く泣く結ばれずにーー・・・ってお決まりなんだけどな。


「式の用意はすでに整えてあるんだ!」


馬鹿だ。











大事なところが抜けています
(私の気持ちはどうなるのよ!)
(問題ない!)
(・・・・・・黙れ)