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我が家の大黒柱は少々亭主関白ぎみである。それが悪いとは思っていないが、ストレスが溜まることが多々あるのも事実だ。悲しいことに我慢強い性格の私は、今の今までそんな生活に耐えてきたわけであるが、そろそろそれも限界に近いようだ。


「いっつも、いつも私を召使のように扱わないで!」


その瞬間は突然訪れた。それは夜、いつものように景吾が私に紅茶を持ってくるように言った時だった。景吾が珍しく驚いた表情を見せる。


「紅茶なんか使用人さんに淹れて貰えばいいじゃない!」


私は紅茶を淹れるのがあまり得意ではない。しかも私が淹れた紅茶なんか景吾の口に合うはずもなく、たまあに文句を言われる始末である。それなのに景吾はいつも私に紅茶を持ってくるように要求してくる。こっちは子育てやなんやらで忙しいのよ!


「……」


暫く沈黙が続いたあと、景吾はぽつりと悪かったな……、とだけ言って寝室に消えて行ってしまった。


「・・・・・・え、」


とたんに罪悪感に見舞われる私。だって景吾のことだから反撃してくると思ったから……


しかしこのまま私が降参するわけにはいかず、私も寝室に入って(寝るベッドは同じ)景吾から離れた位置に横になる。




















「なあ、起きてるか」


なかなか寝付けないでいた私に、景吾がふいに話しかけてきた。でも寝たふりをする私。景吾はそんな私に気付いているのか、言葉を続けた。


「俺はおまえの淹れた紅茶が好きなんだよ」


「……うまくなくてもな、」


「……っ」


思わず言葉が漏れそうになる。そんなのずるいよ。


私は普通の家出身で、使用人なんかがいる贅沢な生活とはかけ離れた生活をしていた。でも景吾と結婚してから、私の生活は一変した。なんでも使用人の人がお世話してくれる生活。そんな生活に慣れすぎて、怠けていたのかもしれない。世の中の主婦に思わず謝りたくなってしまう。


「私もごめんね……」


私はぼそっと呟いたーーー……






逆らってみたけれど
(結局私に勝ち目はないのです)




企画サイト様に提出しますm(_ _)m