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永遠、というものはこの世界に存在するものなのだろうか。これは私が一生問いつづけるであろう事柄。見つけることができたのならば私の勝ち。見つけることができなければ神様の勝ち。


でもね、私、本当は知っているの。私なんかが神様に勝てるわけがないってこと。だから、そう、つまりね。永遠なんてないのよ。これは私が見つけ出した唯一にして無二の真実。


「こっちへこいよ、」
「うん」


そんな私が恋をした。幸せな毎日。彼も私を愛してくれた。それは彼の態度から見ても明白で、彼の愛が感じられる毎日が好きだった。でもそんな毎日の中にも私の心の中には見えないしこりがあった。そのしこりはなかなか無くなってはくれなくて、長らく私を苦しめた。この恋もいつかは終わる。それがしこりの正体。


「跡部、月、きれいだね」
「ああ」


大きなバルコニーから二人で一緒に満月を眺める。夜空に浮かんでいる月に暫くの間、ただ見とれてた。彼は相変わらず綺麗な顔で微笑んでくれる。私も微笑み返すけれど、どこかその笑顔は張り付けた仮面のようだった。いつからだっただろうか、上手く笑えなくなったのは。永遠など無いことを思い出すたびに私の胸はちくり、と痛んだ。幸せを実感するたびにその痛みはどんどん増して行く。もうこうなったら誰にも止められなくて、切なくて、苦しかった。いつの間にか、仮面の表情のみやけに上手くなっていた。



月を眺めながら、ふと気づいた。そういえば、この月も永遠ではないんだって。いつか、何億年もの先に太陽に呑まれて消えてしまう。そんな運命。ポタリ、と涙が頬を伝った。いけない、いけない。私は少し慌て、彼の方を見た。でもそんなに心配する必要もなく、彼はいつの間にかすーすーと規則正しい吐息を吐きながら眠っていた。よかった。泣いている姿を見られなくて。私は彼の前では幸せなはずなんだから、泣いたらいけないんだ。偽りの笑顔を張り付けていなければならない。


「なあ・・・・・・」


彼はようやく起きたのか、碧玉の瞳を私に向けた。その瞳はなぜか悲しげで、私はそれから目を逸らすことができなかった。先程まで眺めていた月は山の向こうに沈んでいた。


「別れよう」


彼は確かにそう言った。私は真っ白な頭のまま、どうして?と咄嗟に言葉を紡いでいた。


「ここ最近、本気で笑わなくなった・・・・・・」
「・・・・・・どうしてわかるの」
「いいから聞け。おまえは今も昔も俺のことなんか全く信用しちゃいねえ。なぜならおまえはずっと思い込んでいたからだ」
「・・・・・・」
「恋はいつか終わるってな」


自分が傷つきたくないからそう思い込むことによって予防線を張って、すべてから逃げてたんだ。そうだろ?


彼の言葉に沈黙するしかなかった。


ほら、やっぱり恋なんていつかは終わるし、永遠なんてないのだわ。なぜかそのとき、悲しくなかったのを覚えている。これが予防線というものであることに、そのときの私は気が付かなかったけれど、もう彼との恋が終わりなことはわかっていた。いつかこんな日が来るだろうことを熟知していた私は、心に痛みを負うことなく、その日を迎えた。


「うまく笑えなくてごめんなさい」


そう言って、私は彼に別れを告げた。




ペルソナは笑わない

(恋なんてくそくらえだわ)




企画サイト様に提出しますm(_ _)m




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