「ジャーファルさん!」 少女はお目当ての男を見つけると今日も元気良く、その大好きな人の名を呼んだ。しかしその隣にいる者の存在に気づくと、みるみるその笑顔を消し去る。 「久しぶりだな、名前!」 「ええ、なにせ、ここ最近は避けていましたので……」 「え?何か言ったかい?」 「いえ、何も。それよりジャーファルさん!まだお仕事が残っているのですからお部屋に帰りましょうよ!」 「そうですね……」 少女はこのジャーファルの隣にいるシンドバッドという男があまり好きではなかった。それは、自分の慕う相手をいつでも独占しているから。くだらない理由ではあるが、少女の方は必死である。少しでもシンドバッドとジャーファルを引き離せる努力ならばなんでもした。 「待ってくれジャーファル、まだバルバッドについての話が終わっていないぞ」 「え、」 「そういえばそうですね……それでは」 「待ってくださいジャーファルさん!」 少女は男の言葉に目を見開くと、思わずヒステリーを起こす。 「シンドバッド様!今度の旅はジャーファルさんではなく他の人をお連れ下さいませ!彼はこの私の元にずっといるのです!連れて行ってはダメ!」 「そう言われてもだな、」 「名前、落ち着きなさい」 「でも、でも、またシンドバッド様がジャーファルさんを独占するなんて……私!」 ジャーファルが混乱する少女に向ける目が、冷たいものへと変わった。それを目にしてハラハラしたのはシンドバッドの方である。二人が互いを想い合っていることを知っているのだから。 「そんなことを公私混同するものではありませんよ」 「だ、だって……!では、私もジャーファルさんのお供にお連れ下さいませ!」 「それは無理ですね」 「なぜですか!」 「襲われる危険性がありますので」 「はい?」 ジャーファルは据わった目をゆったりと隣で状況を見守っている男に向けた。 「襲われる危険性がありますので」 「ん?なぜに俺を見る?」 「・・・・・・なるほど、」 「何がなるほどなんだ?」 「わかりました。私、王宮に残ってジャーファルさんの分も仕事を頑張りますね!」 「そうして下さい」 「え、どういうこと、」 「早く帰って来て下さいね!」 「もちろん」 二人の想いはスピカのように輝き続ける (・・・・・・何が起こったのか誰か教えてくれ) ← |