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(海軍の幼なじみのお話)






「久しぶりね、エース」


私は処刑台の上で微笑んだ。目の前にはずっと私が追っていた海賊の男が鎖に繋がれている。男は何も言葉を発することなく口角を吊り上げた。


「そうだな・・・・・・」


久しぶりに聞いた男の声に繕っていた笑顔が壊れて、涙が滲みそうになる。今更、私がこの男のために泣くことなんて出来やしないのに。
私とこの男は一緒の場所で育った仲。けれど、私は海賊が大嫌いだったから、いつも海賊を目指すエースたちを馬鹿にしては怒らせてばかりだった。でも、本当はずっとエースのことが好きだった。だからエースが海へと旅立ったあと、私は海軍に志願したんだ。エースにもう一度会いたくて、もう一度喧嘩がしたくて・・・・・・
でも久しぶりに会ったエースに言われたのは、そんなに俺のことが嫌いだったのかよ、という一言だった。エースを捕まえるために海軍になったのだと勘違いされたらしい。その言葉に、素直でない私は絶対にエースを捕まえて牢屋送りにしてやる、と声を張り上げたのだった。そして会うたびにその言い合いは繰り返されたものだった。
でもまさかこんなことになるとは思っていなかった。


今日、エースは処刑される


「いい気味ね。私があなたを捕まえられなかったのが残念だわ」


「・・・・・・ふ」


「何が可笑しいの」


エースは可笑しそうに喉の奥でくつくつと笑った。私は眉を寄せて笑う目の前の男を睨みつける。


「おまえに俺は捕まえられねぇ」


「・・・・・・なんでよ」


「言っていいのか?」


「当たり前でしょ、早く言って」


エースは顔を上げると私を静かに見据えた。どくん、と心臓が鳴る。昔からエースのこの瞳に弱かった。真っ直ぐで真剣な瞳。


「おまえが俺に惚れてるから」


「!?」


私は頭が真っ白になって口をぱくぱくさせた。心なしか顔が熱い。


「図星だな」


私の反応にエースは薄く笑う。


「い、いつから・・・・・・」


「最初から」


力が抜けてその場に崩れ落ちた。最初から気が付かれていたなんて思いもしなかった。なんだか悔しい。きっと、エースは何で私が海軍になったのかも気付いてるんだ。


「そ、そうよ・・・・・・あんたに惚れてるわよ!第一あんたはどうなのよ、そんな理由で追いかけられてたんだから嫌なら嫌って言えばよかったじゃない」


「聞きたいのか?」


一瞬、エースの表情が読み取れなくなった。と、同時に返ってくる言葉、


もうすぐ俺は死ぬんだぞ


次の言葉を失った私はただその場に座り込んでいるだけしかできなかった。エースが私のことをどう思っていようと、エースの死は避けられないんだ。聞いたところで、私たちはどうにもならない。


「ずるいよそういうの」


レールエンド
(レールは途切れた)(答がどうあれ終わりに変わりないのだもの)