彼の海賊船はちょっと変わっていて、船体がそのまま潜水艦になっている。だから、その死角に入ってストーカーするのも一苦労。海の上に浮かんでる船と違って、潜水艦にはあまり死角がないのだ。


「見えないなー」


私は窓を覗きながらボヤいた。潜水艦の
中の人は外に出てくることはまずない。だから彼の姿を見るのでさえ一苦労なんだよ。


(キミが好きな人、こっちにいるよ)


お魚さんたちが教えてくれた言葉を頼りに、そちらの窓を覗く。いつもこうやって彼の姿を見ようと苦戦している私を見かねてはお魚さんたちはこうやって助言をくれる。


いました。


目の下に深い隈、耳にはピアス、顎には髭といかにもチャラチャラしてそうな外見であるが、その外見に似合わない知的な瞳がカッコいい。今はコーヒーを飲みながら読書中。その真剣な眼差しがまたカッコいいんだ。










(逃げて)


私が彼に見とれていると、お魚さんたちの様子が変わって、突然ざわめきだした。不思議に思って後方を振り返ると、巨大な海王類がこちらに近づいていた。


まったく…


海の中にはステキな世界が広がっているが、危険もたくさんあるのだ。巨大な海王類が狙っているのは彼の乗るあの潜水艦に違いない。


「ローズマリーさんお願いします」


私は首にぶら下げていた笛をピューと吹いた。


すると幾秒もしないうちに現れたのは巨大なイルカの海王類。私のお友達ローズマリーさんである。ローズマリーさんはあっという間に巨大な海王類を倒すと、さっさと私に挨拶もなしにどこかへ泳いで行ってしまった。ローズマリーさんは気まぐれで、人間があまり好きではない。だから私のピンチは助けてはくれるが近くに人間がいるとさっさとどこかへ行ってしまうのだ。


「ローズマリーさん!ありがとう!」


私の叫んだ声はローズマリーさんに届いたんだろうか。ローズマリーさん居なくなるの早いんだよ。









「……」


「船長、外に何かいるんですか?」


「……いや、」






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