私の家族は海賊に殺された。


海軍は助けてはくれなかった。








03






私は小さな港町で育った。なに不自由ない幸せな毎日。そして、私にとって家族は何に変えても大切な存在だった。彼らのためならいくらでも命を差し出せた。私の全てだった。彼らが笑うなら共に笑い。彼らが泣くなら共に涙を流した。


何にも代えがたく、私は私の家族を愛した。


それなのに、私は彼らを守れなかった。


賞金首の海賊を前に私は成す術もなく、ただ私の家族が海賊共に殺されるのを見ていることしか出来なかった。私は海賊に拐われ、無理矢理乗せられた船の上で、生まれ故郷が火の海に包まれ燃えるのを泣きながら見ていることしかできなかった。


赦しはしない


その後、私は死に物狂いでその海賊船から逃亡した。


復讐の焔を胸に抱き、何とかたどり着いた島で得た不思議な実の話を頼りに、私は悪魔の力を手に入れた。


そしてようやく復讐を果たしにあの海賊共を追って、やっと見つけた矢先に他の海賊に滅ぼされてしまった。この私を助けた海賊に。






私が海賊に助けられてから暫く経った。身体の傷口も大分痛まなくなり、私はベッドから起き上がれるまでに回復していた。


「失礼しますー」


戸を開けて、いそいそと若者数人と不思議な話す白熊が一匹入ってきた。あの日以来、目の下に隈のある男は見ていないが、代わりに彼の部下が包帯を換えたりと色々と世話を妬いてくれていた。私はそれに表面上感謝の言葉を述べはしても、決して心からの謝辞は述べられなかった。


家族を失ったあの日以来、私の心には何もない。復讐する相手も失い、私の心にはさらに何も無くなった。


何もかもがどうでもいい。


もうそろそろ此処を出よう。そして生まれ故郷に戻ろう。そしたら、私も皆の元へ……。


私は空虚な瞳で世話を妬く彼らにお礼を言った。



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