「どうして君がここに!?」
濃紺の髪をした青年は私の顔を見ると、驚愕に目を見開いた。
「それはこっちの台詞よ」
ああ、どうして気がつかなかったのだろう。シンドリアが彼の王国だということに・・・・・・。話には聞いていたのだ。シンドリアは七海の覇王シンドバッドが治めている国だと。でも、まさか、その覇王が"あのシンドバッド"だとは思いもしていなかった。
「知り合いなんですかシンドバッドさん!?」 「その話は後だ。アリババくんは下がっていなさい」
シンドバッドは私を見据えると、言った。
「剣を置きなさい。さもなければ、君を切らなくてはいけなくな・・・・・・っ!」 「・・・・・・」
私はシンドバッドの言葉を最後まで聞くことなく、彼の懐に潜り込むと剣を振った。シンドバッドはそれを避けると、悔しそうに唇を噛んだ。
「やめなさい、君と戦いたくはない」 「馬鹿言わないで。戦わなくちゃ私の目的は果たせない!」
何度も何度もシンドバッドの懐に潜り込むが、その度に振るった刃を避けられる。そうしているうちに、息が段々と上がって来ていることに気づいた。反して、シンドバッドは全く息すら乱れてはいない。また、この男は私の邪魔をするのか。
「なんで私の邪魔をする!」
それは憎しみの篭った声色だった。私が死に切れなくて今ここにいるのも、この手で復讐を果たせなかったのも、全部目の前の男が邪魔したせいだ。
「君を救いたいんだ」 「うるさい!」 「・・・・・・」
屁土が出るような言葉を連ねて、シンドバッドは私を止めようとするが、私にその気がないことを悟るとようやく本気を出してきた。今までとは比べものにならないくらいのスピードで攻めてくる。そして突然お腹に大きな衝撃を受けた私は意識が遠退いていくのを感じた。
最後に視界が捉えたのは、この上もなく悲しそうなシンドバッドの顔だったーー・・・
理由なき戦いの幕引き (これで死ねたのかな)
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