姉様!歌ってー!
名前、歌っておくれ
君の歌を
名前さん
名前姫さま
名前
歌っておくれ
「・・・・・・!」
目を見開いた。身体の感覚はなく、キョロキョロと目玉だけを動かして状況を把握することに努める。ここは一体どこだろう。それにしても身体が異様にだるい。 そうだ・・・・・・確か、私はシンドバッドと戦って負けたんだ。じゃあなぜまだ私は生きてるんだろう。
「やっと起きましたか」
声の方を振り向けば、あったのは見知らぬ男の顔。
「初めまして、ジャーファルと申します」
頬にそばかすのある男は微笑んで言った。しかし、どこかその笑顔には作り物のような雰囲気が漂っていた。無理もない。私はこの王宮にいる者を殺そうとしたのだから。
「どうして私を殺さないの・・・・・・」
私は呟いた。そばかすの男は表情を崩さないまま、一言言った。
「それは我等が王が決めることですので、」
さっさと殺せばいいのに、と呟いた言葉は誰に届くでもなく空気に溶けて消えた。
「お姉さん起きたー?」
そばかすの男が室を後にして、暫く経つときゃっきゃっと子供が入って来た。その子供に続いて慌てた様子の少年と、無表情の少女も入って来る。
「アラジン!やっぱり勝手に入っていいのか?」
あ、この少年は・・・・・・
声を聞いて気付いた。アリババ・サルージャだ。私が命をとろうとしていた人物。
「大丈夫だよ。ね、お姉さん」
この子たちはいったいなんななのだろう。もしかして私の命を取りに来たのだろうか。
「お姉さん、遊ぼう!向こうにたくさん美味しいものがあるんだ!」
邪気のない子供の笑顔が眩しい。本当に邪念のない笑顔。私は思わず目を細めた。なんだろう、この懐かしい感じ。
「アラジン、この人怪我してるみたいだから無理だろ」
「うん、だから治ったらまた来るね!」
子供は満面の笑みを浮かべたあと、わいわいと扉を開けて訳のわからないうちにさっさと出て行ってしまった。いったいなんだったのだろう。 でも懐かしいな。なんだろうこの気持ち。
暖かい
溶かすのは (忘れられたもの)
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