死のうとした。でも死に切れなかった。どうしても死のうとするとあの男の顔が浮かんでは、私をこの世界に留まらせようとする。鬱陶しいことこの上ない。結局、私は死に切れなかったのだ。生きていく意味などもうないのに。ずっと決めていたのに。復讐を成し遂げたあと、自分も地獄に落ちようって……
「もし、黒き器のお嬢さん」
そうやって途方に暮れていたある日、その怪しげな男は突然声を掛けてきた。共に世界を黒く染め上げようというのだ。なぜ私なの、と問いかければ、あなたほど適任な者もそうそういないと言われた。確かに。世界をこれでもかと憎んできたのは、私だ。滅んでも構わないと何度思ったことだろう。こんな醜い世界などいらない、と。
「いいけど……」
結局、私はこういう星のもとに生まれたのだ。世界は光と闇が無ければ成り立たないという。その世界の闇の部分として私は生まれたのかもしれない。そう思うことにした。
「それはそれは!私たちはあなたを歓迎しましょう!では、手始めにあなたにして頂きたいことがございます」 「なに……」 「この人物を始末して頂きたく」
そう言って見せられたのは一枚の似顔絵とその人物の居場所が記されたメモだった。
「あなたの腕ならば簡単に仕留められるかと、」 「……」 「では良い報告を待っていますよ」
要するに力量試しというわけか、それとも捨て駒か。どっちにしろ私はこの似顔絵の人物を始末しなければいけないらしい。私はそこで考えることをやめた。この人がどんな人物であろうと、自分にはなんの関係もないのだ。増して、闇に染まることを選んだ私には特に、
闇に蹂躙する (他に居る場所もないから)
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