女は無意識に悟っていた。この王宮において自分の存在が荷物でしかないことをーー・・・・・・













「おはよう!亜子お姉さん!」


覚えのある腹の感触と声に私は目を開けた。


「ねえねえ、どうしてこんなところで寝ちゃったの?」


私が横たわって寝ていたのは、廊下のバルコニーだった。昨日の夜、シンドバッドさんの部屋に行ったあと、また月を見にこのバルコニーに戻って来たのだ。それでそのまま月を眺めながら、ここで寝てしまったというわけだ。


「・・・・・・ん、いたた・・・・・・」


石の床で寝ていたものだから、起き上がる際に身体中が軋んで、痛みが走った。


「へはは、こんなところで寝ちゃったよ!」
「ははは、お姉さんっておもしろいね!」
「・・・・・・ありがとう」


アラジンの無邪気な笑顔に、なぜか心が痛んだ。なんでだろう……


「みんながお姉さんのこと探してたよ」
「みんな……?」
「うん!ヤムお姉さんとか、あとジャーファルさんもかな?」「わかった・・・・・・今いくね」


私に何か用があるのかな・・・・・・




***




「あの、用ってなんですか?」
「あ!シェーラ・・・・・・じゃなくて亜子!」


王宮の広い庭に降りると、ヤムライハさんが笑顔で手を振っていた。


「やっぱりシェーラと間違えちゃうわ。ごめんね」
「いえ、大丈夫ですよ」
「あら、そう?そうそう用っていうのは、亜子も魔法が使えるかどうか知りたかったの。もし使えるならアラジンくんに私以外の魔法を見せてあげたくて!」
「・・・・・・」


魔法・・・・・・なんて使えるわけがないよ・・・・・・


「あの、使えません」
「・・・・・・そ、そうよね!ごめんなさい!」
「何やってんだよヤムライハ!」
「シャルルカン!なによ痛いじゃない!」


私がしょんぼりと下を向いたのと同時に、シャルルカンさんがどこからともなく飛んできてヤムライハさんに突進した。そして私に対して満面の笑みを浮かべる。


「ヤムライハなんて放っておいて俺と剣で手合いしようぜ!」


う・・・・・・それも出来ない。


「・・・・・・できません」
「え・・・・・・!?」


シャルルカンさんは私の返答が予想外だったのか、口をポカーンと開け放つ。


「そ、そうだよな!悪い、俺シェーラさんと同じだっていうからてっきり・・・・・・」
「・・・・・・あ、いえ、大丈夫ですよ」


私はシャルルカンさんに向かってにっこりと笑みを浮かべた。でも内心は苦しくて苦しくて堪らない。なんでなのかなんて、私が聞きたい。この二人やアラジンくんを見てると無償にイライラした。理由なんかわからない。私が聞きたい。


でも、一つだけわかったことがある。それは、私がここにいるべきではないということ。私がここにいる理由なんてないに等しいのだから・・・・・・



(やっと決めた一つのこと)